新着情報
21.12.13
新型コロナワクチン接種後の“アナフィラキシー”に対する予防法を発見/看護学群・風間逸郎教授
看護学群に所属する風間 逸郎教授は、病態生理学・内科学・一般生理学を専門分野としております。このたび、これまでの自身の研究成果をもとに“新型コロナワクチン接種後に起きるアナフィラキシー”に対する予防法の鍵となる重要な知見を、英文雑誌に報告しました。
本報告内容については、12月13日付けで, 英文雑誌(Clinical and Molecular Allergy, 風間教授が単独著者)の電子版に掲載されました。 |
※なお、風間教授はこれまでも、自身の基礎研究成果をもとに、新型コロナウイルス感染症や後遺症、ワクチン接種後の副反応に対する治療法の可能性を明らかにし、英文雑誌に報告してきました。また、宮城県内における新型コロナウイルス感染症患者の特徴や問題点・感染対策についてもまとめ、和文雑誌に報告しました。
<参考>
・風間逸郎教授が新型コロナウイルス感染症に対する新規治療法の可能性を発見
・新型コロナウイルス感染症の“後遺症”に対する治療法を発見/看護学群・風間逸郎教授
・宮城県における新型コロナウイルス感染症患者の特徴を明らかに/看護学群・風間逸郎教授が看護学群4年生と報告
・新型コロナワクチン副反応に対する非ステロイド性抗炎症薬の有用性を明らかに/看護学群・風間逸郎教授が看護学群4年生と報告
新型コロナワクチン接種後に起こりうる重症型のアレルギー“アナフィラキシー”
新型コロナウイルス感染症の終息のためには、ワクチン接種が切り札であることは言うまでもありません。ワクチン接種後に起こりうる重篤な副反応のひとつとして“アナフィラキシー”が知られています。アナフィラキシーに対する治療では、エピペン(アドレナリン)を、すぐに筋肉注射することが大原則です。しかし、ワクチン接種が主に行われている大規模接種会場などでは、必ずしも、すぐにアドレナリンを投与できる医療体制が整っているとは限りません。
※アナフィラキシーとは、肥満細胞(=主に粘膜組織に存在する骨髄由来の細胞で、炎症や免疫反応などの生体防御機構に重要な役割を持つ)が過剰に活性化することで放出するヒスタミンによって、全身に強いアレルギー反応が起こる状態のことです。通常は、食べ物(甲殻類・そばなど)、薬(抗生物質や痛み止めなど)、ハチ毒が原因になることが多いですが、新型コロナワクチンでは、その中に含まれるポリエチレングリコール(PEG)という成分が引き金となり、全身性の蕁麻疹や呼吸困難、往々にしてショック状態に陥る非常に危険な病態です【図1】。
肥満細胞の活動性に注目、“アナフィラキシー”に対する有効な予防薬の候補
アナフィラキシーを起こす主役である肥満細胞は、ヒトの血液中や、鼻などの粘膜に広く分布しています。そして、ひとたびハチ毒や食べ物、薬などの刺激が加わると、ヒスタミンを含んだ大量の分泌顆粒を細胞外に放出する状態に変容します。この現象は“脱顆粒現象(エクソサイトーシス)”と呼ばれます【図2】。
風間教授は、肥満細胞の脱顆粒現象(エキソサイトーシス)を電気生理学的な膜容量の増加として捉え、それを抑える薬の作用を明らかにする独自の手法を開発してきました。これにより、日常診療の中で多くの患者さんたちに使われている抗アレルギー薬(オロパタジンなど)や抗生物質(クラリスロマイシンなど)、ステロイド薬(デキサメタゾンなど)の中に、肥満細胞の活性化を強力に予防する薬があることを発見してきました【図3】。これらの薬は、安全性が十分に確かめられているので、副作用を心配することなく、今後、実臨床への応用が期待できる可能性があります。
さらに最近では、薬剤だけでなく、コーヒーや緑茶に含まれるカフェインやカテキンも、肥満細胞の活性化を予防することを明らかにしました【図3】。
新型コロナワクチン接種後にアナフィラキシーが起きた場合、その対処法についてのガイドラインは確立されていますが、予防法については未だ明らかにされていませんでした。今回の発表内容は、これまで風間教授が明らかにしてきた自身の研究成果をもとに、アナフィラキシーの予防法についての重要な知見を明らかにしたものであるといえます。新型コロナウイルス感染症の終息に向け、今後もワクチン接種が切り札であることには変わりがありません。従って、強いアレルギー疾患の既往がある場合であっても、ワクチン接種をすることが強く推奨されています。今回の風間教授の発見は、とくにアナフィラキシーを発症するリスクの高い人に対する予防法の可能性を示唆したという点で、社会的な観点からも貢献度が高く、非常にインパクトのある内容です。
風間教授は今後も、臨床から発想した研究の成果を再び臨床に還元することを目標とし、日々研究に取り組んでまいります。学生さんでも教職員の方でも、風間教授と一緒に研究をやってみたい人(在学中だけでも“研究者”になってみたい人!)は、是非ご一報ください。いつでもスタンバイしてお待ちしております。
( kazamai(a)myu.ac.jp メールの際は(a)を@に変えてご連絡願います)
研究報告の詳細について
なお、本研究報告は、12月13日付けで英文雑誌(Clinical Molecular Allergy, 風間教授が単独著者)の電子版に掲載されています。また、風間教授がこれまでに発表してきた、新型コロナウイルス感染症に関連する主な研究成果についても、別の英文/和文雑誌に掲載されています。(いずれも風間教授がCorresponding author)
- Does immunosuppressive property of non-steroidal anti-inflammatory drugs (NSAIDs) reduce COVID-19 vaccine-induced systemic side effects? (本学看護学群学生が共著者)
- 宮城県で発生した新型コロナウイルス感染症患者の特徴 ─第 1 波 88 名の集計から見えた問題点と今後の課題─(本学看護学群学生が筆頭著者)
- Stabilizing mast cells by commonly used drugs: a novel therapeutic target to relieve post-COVID syndrome?
- Targeting lymphocyte Kv1.3-channels to suppress cytokine storm in severe COVID-19: Can it be a novel therapeutic strategy?
また、風間教授がこれまでに発表してきた、関連する主な研究成果についても、別の英文雑誌に掲載されています。(いずれも風間教授がCorresponding author)
- α 1-Adrenergic Receptor Blockade by Prazosin Synergistically Stabilizes Rat Peritoneal Mast Cells
- Anti-Allergic Drugs Tranilast and Ketotifen Dose-Dependently Exert Mast Cell-Stabilizing Properties
- Hydrocortisone and dexamethasone dose-dependently stabilize mast cells derived from rat peritoneum
- Clarithromycin Dose-Dependently Stabilizes Rat Peritoneal Mast Cells
- Olopatadine inhibits exocytosis in rat peritoneal mast cells by counteracting membrane surface deformation
- Mast cell involvement in the progression of peritoneal fibrosis in rats with chronic renal failure
研究者プロフィール
・風間 逸郎(かざま いつろう):看護学群教授
病態生理学・内科学・一般生理学を専門分野としております。また、内科の医師として現在も患者さんの診療に携わる中での研究は、常に臨床からの発想に端を発しており、研究の成果を再び臨床に還元することを目標としてきました。そして、遺伝子レベルでの解析から、細胞、生体レベルでの解析まで行うことにより、ミクロの研究とマクロの研究とを結びつけることを常にこころがけています。
<参考>
風間逸郎教授が腎臓の線維化における新規病態メカニズムを発見
風間逸郎教授が研究指導する学生達が「心筋梗塞でおこる心電図異常のメカニズム」を証明
風間逸郎教授がアナフィラキシーに対する新規治療法を発見
風間逸郎教授が新型コロナウイルス感染症に対する新規治療法の可能性を発見
新型コロナウイルス感染症の“後遺症”に対する治療法を発見/風間逸郎教授
麻疹(ましん)に対する新規治療法の可能性と臨床現場での有用性/風間逸郎教授が学生と報告
心電図検査における人為的ミスの発生と予防/ 風間逸郎教授が学生と報告
風間研究室の学生が「カフェインやカテキンによる抗アレルギー作用」のメカニズムを証明
女性が筋ジストロフィー(デュシェンヌ型)を発症するメカニズムを発見
宮城県における新型コロナウイルス感染症患者の特徴を明らかに/風間逸郎教授が学生と報告
マグネシウム過剰投与が引き起こす「高マグネシウム血症」心電図変化とそのメカニズムを疑似病態モデルで証明
病態生理にもとづき、高カリウム血症に対する看護的介入方法を発見
風間教授・編集の『看護技術』10月増刊号「病態生理からひもとく水・電解質異常」発刊
看護学群・風間研究室の学生が「高カリウム血症の心電図変化とそのメカニズム」を証明
新型コロナワクチン副反応に対する非ステロイド性抗炎症薬の有用性を明らかに