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21.12.27
若年者における新型コロナワクチン接種後の副反応の特徴を明らかに/看護学群・風間逸郎教授が看護学群4年生と報告
看護学群に所属する風間 逸郎教授は、病態生理学・内科学・一般生理学を専門分野としており、内科の専門医として、現在も患者さんの診療に携わっています。このたび、アンケートによる調査をもとに、若年者における新型コロナワクチン接種後の副反応について、症状の種類や頻度、発症日と持続期間、副反応への対処法についてデータを集約し、まとめました。そのうえで、副反応のメカニズムや、看護師・保健師としてできることを考察、和文雑誌に発表しました。
本研究報告は、12月20日付けで「看護技術」2022年1月号(メヂカルフレンド社)に研究レポート論文として掲載されています。看護学群4年生先崎桃乃さんが、“若年者における新型コロナワクチン接種後の副反応の特徴”をテーマとした卒業研究を行うにあたり、風間教授がその指導を行いまとめたものです。今回、和文雑誌に発表した論文は、先崎さんが筆頭著者、風間教授が責任著者となっています。 |
※なお、風間教授はこれまでも、自身の基礎研究成果をもとに、新型コロナウイルス感染症や後遺症、ワクチン接種後の副反応に対する治療法の可能性を明らかにし、英文雑誌に報告してきました。また、宮城県内における新型コロナウイルス感染症患者の特徴や問題点・感染対策についてもまとめ、和文雑誌に報告しました。
<参考>
調査により明らかになった、若年者における新型コロナワクチン接種後の副反応の特徴
2回目接種後の方が、より症状が強く、かつ長く続く
新型コロナウイルス感染症の終息のためには、ワクチン接種が切り札であることは言うまでもありません。しかし、接種直後に腕の痛みや腫れ、数日後には発熱・頭痛・全身倦怠感などの副反応が出ることが知られており、それによって仕事や学校を休まざるを得ないなど、日常生活に大きな支障をきたしてしまうこともあります。本研究では、2回目のワクチン接種を完了した若年者を対象にアンケート調査を実施した結果、これまでの報告と同様、若年者においてはワクチン接種後の副反応が出現しやすく、とくに発熱、頭痛、全身倦怠感などの全身症状は、1回目よりも2回目接種後に多く出現しました【図1】。
いずれの症状の出現時期も、接種後1~2日と、1回目と2回目で大きな違いは見られませんでした。しかし、症状の持続期間については、いずれの症状も2回目接種後に長引く傾向があり、とくに発熱や全身倦怠感は、最大で接種後7日間持続しました【図2】。また、発熱した場合には、1回目よりも2回目接種後の方が高熱となった人の割合が高くなるなど、1回目よりも2回目接種後の方が、より症状が強く、かつ長く続くことが分かりました。
副反応のメカニズムの正体 “免疫反応”と解熱鎮痛薬の効果
新型コロナワクチンの接種後、体の中ではウイルスを中和するための抗体が作られ、徐々に新型コロナウイルスに感染しにくい、または感染したとしても重症化しにくい体になっていきます。それとともに、体の中でサイトカインと呼ばれる炎症性物質が増えたり、免疫細胞の一種であるリンパ球の活動性が高まったりするため、ワクチン接種後には、発熱・頭痛・全身倦怠感といった全身性の副反応が起きやすくなります。副反応は自然に軽快する人もいますが、強く長引く症状に対しては, 解熱剤を内服せざるを得ない場合も少なくありません。
先崎さんと風間教授による調査の結果、解熱剤を使った場合、中でもとくに非ステロイド性抗炎症薬(non-steroidal anti-inflammatory drugs: NSAIDs)とよばれるイブプロフェン、ロキソニン、アスピリンを含む製剤の方が、アセトアミノフェンを含む製剤よりも、発熱・頭痛・全身倦怠感などの症状の持続期間を短縮することが明らかになりました。
ワクチン接種率向上のため、看護師・保健師としてできること
2021年10月現在、日本人の全人口において2回目のワクチン接種を終了した人の割合は70%前後に達しています。ワクチン接種を受けてない人々の中には、長期的な安全性に対する不安を理由に挙げている人もいますが、短期的な、ワクチン接種後の副反応による体調不良を危惧する人たちも多くいます。本研究の結果、ワクチン接種後に起こりうる副反応の種類だけでなく、その発症時期、持続期間、有効な対処法まで明らかになりました。これにより、ワクチン接種後に起こりうる体調の変化についての見通しを立てることができるようになったといえます。
現在、各自治体では、看護師・保健師等による新型コロナウイルスワクチン副反応相談センターを設置しているところが多くあります。本研究により得られた科学的根拠や、これまでの基礎研究により明らかになった病態生理をもとに、ワクチン接種後に起こりうる副反応の見通しや対処法まで説明することができれば、ワクチン接種に対する人々の不安を取り除き、少しでも接種率の向上に寄与することができると考えられます。
風間教授は「今後も、臨床から発想した研究の成果を再び臨床に還元することを目標とし、日々研究に取り組んでまいります。学生さんでも教職員の方でも、一緒に研究をやってみたい人は、是非ご一報ください。在学中だけでも“研究者”になってみたい!学会で発表してみたい!論文の著者になってみたい!という人でも構いません。いつでもスタンバイしてお待ちしております」とのメッセージを寄せました。
連絡先メールアドレス:kazamai(a)myu.ac.jp ※メールの際は、(a)を@に変換ください
研究報告の詳細について
なお、本研究報告は、12月20日付けで「看護技術」2022年1月号(メヂカルフレンド社)に研究レポート論文として掲載されています。また、風間教授がこれまでに発表してきた、新型コロナウイルス感染症に関連する主な研究成果についても、別の英文/和文雑誌に掲載されています。(いずれも風間教授がCorresponding author)
- Potential prophylactic efficacy of mast cell stabilizers against COVID-19 vaccine-induced anaphylaxis
- Does immunosuppressive property of non-steroidal anti-inflammatory drugs (NSAIDs) reduce COVID-19 vaccine-induced systemic side effects? (本学看護学群学生が共著者)
- 宮城県で発生した新型コロナウイルス感染症患者の特徴 ─第 1 波 88 名の集計から見えた問題点と今後の課題─(本学看護学群学生が筆頭著者)
- Stabilizing mast cells by commonly used drugs: a novel therapeutic target to relieve post-COVID syndrome?
- Targeting lymphocyte Kv1.3-channels to suppress cytokine storm in severe COVID-19: Can it be a novel therapeutic strategy?
また、これまで風間教授が本学看護学群の学生を指導しながら発表してきた研究成果については、以下の和文・英文雑誌に掲載されています(いずれも風間教授がCorresponding author)。
- Insulin accelerates recovery from QRS complex widening in a frog heart model of hyperkalemia(本学看護学群学生が筆頭著者)
- 高カリウム血症に対し大腸のカリウムチャネルをターゲットとした看護的介入(本学看護学群・庄子美智子助教が筆頭著者)
- デュシェンヌ型筋ジストロフィー女性保因者が発症するメカニズムと看護での実践(本学看護学群学生が筆頭著者)
- Catechin synergistically potentiates mast cell-stabilizing property of caffeine(本学看護学群学生が筆頭著者)
- 心電図検査における人為的ミスの発生と予防―ウシガエル心電図を用いた検討―(本学看護学群学生が筆頭著者)
- 麻疹に対するビタミンA補充療法の意義と看護現場での実践(本学看護学群学生が共著者)
- Reciprocal ST segment changes reproduced in burn-induced subepicardial injury model in bullfrog heart(本学看護学群学生が共著者)
研究者プロフィール
・風間 逸郎(かざま いつろう):看護学群教授
病態生理学・内科学・一般生理学を専門分野としております。また、内科の医師として現在も患者さんの診療に携わる中での研究は、常に臨床からの発想に端を発しており、研究の成果を再び臨床に還元することを目標としてきました。そして、遺伝子レベルでの解析から、細胞、生体レベルでの解析まで行うことにより、ミクロの研究とマクロの研究とを結びつけることを常にこころがけています。
<参考>
風間逸郎教授が腎臓の線維化における新規病態メカニズムを発見
風間逸郎教授が研究指導する学生達が「心筋梗塞でおこる心電図異常のメカニズム」を証明
風間逸郎教授がアナフィラキシーに対する新規治療法を発見
風間逸郎教授が新型コロナウイルス感染症に対する新規治療法の可能性を発見
新型コロナウイルス感染症の“後遺症”に対する治療法を発見/風間逸郎教授
麻疹(ましん)に対する新規治療法の可能性と臨床現場での有用性/風間逸郎教授が学生と報告
心電図検査における人為的ミスの発生と予防/ 風間逸郎教授が学生と報告
風間研究室の学生が「カフェインやカテキンによる抗アレルギー作用」のメカニズムを証明
女性が筋ジストロフィー(デュシェンヌ型)を発症するメカニズムを発見
宮城県における新型コロナウイルス感染症患者の特徴を明らかに/風間逸郎教授が学生と報告
マグネシウム過剰投与が引き起こす「高マグネシウム血症」心電図変化とそのメカニズムを疑似病態モデルで証明
病態生理にもとづき、高カリウム血症に対する看護的介入方法を発見
風間教授・編集の『看護技術』10月増刊号「病態生理からひもとく水・電解質異常」発刊
看護学群・風間研究室の学生が「高カリウム血症の心電図変化とそのメカニズム」を証明
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