新着情報

23.10.20

9/30 DSC STUDIO 2023『未来とともにある「テマヒマ」の暮らし』Day2フィールドリサーチを実施/デザインスタディセンター

宮城大学デザインスタディセンター(DSC)による『未来とともにある「テマヒマ」の暮らし』をテーマとしたデザイン教育プログラムを9月~11月にかけて展開しています。第2回となるフィールドリサーチを9月30日に実施しましたのでお知らせいたします。

手を動かすことで見えることを考え,デザインの視点から未来に向けてアクションを
テーマ『未来とともにある「テマヒマ」の暮らし』

このデザイン教育プログラムは,設定されたテーマに対して“デザインとは何か”という問いを投げかけ,問題提起と活動に取り組むプロセスを通して,学生・教職員含め“デザインについて考える・デザイン思考を理解する”ことを目的としたものです。今回のテーマは『未来とともにある「テマヒマ」の暮らし』。テクノロジーや産業の進化,社会情勢の変化により,その役割や機能が日々変化している中で「手を動かす」という行為は,この先どこへ向かうのでしょうか?私たちは今,手を動かし時間と労力をかける「テマヒマ」から,どのような新しい価値を見出していくことができるでしょうか?「手を動かすこと」に潜在する可能性を探索し,『ともにある暮らしの未来』のデザインに取り組みます。

Day2:フィールドリサーチ/山形県の真室川町と新庄市

イノベーションのトッププレーヤーのファシリテーションのもと,文化人類学(伝統)やテクノロジー・アート(現代)の専門家によるレクチャー,地域の先進的な思想を訪ねるフィールドワークを交えた全6日間のプログラムになります。9月30日に行われた第2回のプログラムでは,第1回で話題が提供された「未来のくらし」「地域資源」「民藝」などのキーワードを念頭に,山形県の真室川町と新庄市でのフィールドリサーチを実施。大型バスを利用した34名の昨年度より大規模なリサーチとなりました。フィールドリサーチでは土地の特徴や歴史・文化を確認し,地域における先進的な試みのキーパーソンへのインタビューや様々なアクティビティを通して参加者の視点をアップデート。調べたこと・見たこと・聞いたことなどの客観的事実や,事実をもとに驚いたことや感じた違和感などを記録し,そこで得た気づきや学びを参加者間で共有することで,その後のディスカッションの土台としました。

雪の里情報館
地域における暮らしとものづくりの深いつながり

雪の里情報館は,雪害救済運動によって昭和8年に設置された,旧農林省積雪地方農村経済調査所の跡地に,当時の建物の一部を保存・復元したもので,さまざまな雪国・農村経済に関する資料計4万点余が収蔵されており,雪国文化に関する市民の学習を促し「雪のふるさとづくり」をキーワードとしています。参加者たちは,雪についての様々な知識や豪雪地帯の暮らしと歩み,著名なデザイナーであるシャルロット・ペリアンの新庄における活動などを見学し,地域における暮らしとものづくりの深いつながりについて,実例を通して学びました。

工房ストロー/髙橋伸一氏(山形県真室川町)
デジタルでは得られないアイデアの広がりが生まれることの一端を知る

工房ストローは「昔ながらの小さな農家」として,藁細工・藁で作られた現代の暮らしにフィットする新たな道具の制作や,それらを紹介するワークショップを行っています。農業の営みに自然風土の中で自然体に生きる知恵が凝縮されていると考え,伝統の手仕事を守りながら,地域の自然の循環の輪のなかに当てはまる「作る暮らし」を大切にしています。参加者たちは,髙橋氏が現在の活動を始めるまでの経緯について聞き取りを行った上で,実際の藁の加工を体験しました。一見単一の素材に見える藁も,適切に加工をすることでカン,ハカマ,ミゴ,ミゴバカマなど様々な特性を持った材料に分割することができ,それに適したプロダクトを作ることができます。手を通して実際に素材を探索することで,デジタルでは得られないアイデアの広がりが生まれることの一端を知ることができました。

吉野敏充デザイン事務所(山形県新庄市)
マルシェやアートプロジェクトのアイデアを地域で共有し,広めてくプロセスを知る

吉野敏充氏は,東京デザイン専門学校卒業し,ソフト・オン・デマンド入社後SODアートワークスとしての活動を続け,2010年に山形県で吉野敏充デザイン事務所を設立。 新庄最上・山形県の地域資源を活用したプロジェクトとして,地元産農作物などの販売を行うマーケット『kitokitoMarche』,山形県の工芸品のリデザイン・販路支援プロジェクト『山から福がおりてくる』の運営,新庄の後世に残す食のプロジェクト『新庄いいにゃ風土/SHINJO ii-nya FOOD』のプロデュースなどを行っています。参加者たちは,吉野氏が新庄で活動を始めるまでの経緯や活動についての聞き取りを行い,その事例をもとにアイデア創出に関するディスカッションを行いました。今や新庄を代表するマルシェやアートプロジェクトのアイデアを地域で共有し,広めていったプロセスを知ることは大きな学びとなりました。

その後,参加者は新庄の郷土料理である「納豆汁」を調理し食べながら,地域と活動について追加の質疑やフィールドワークの振り返りを行いました。

デザインスタディセンター担当教員である佐藤宏樹准教授は「今回は,実際にフィールドに入って『手を動かし,行動し,考えること』の実践例を見て体験することで,『自らの手で探索すること』の解像度を格段に高めることができたと思います。次回以降はその情報をいかに消化して未来へのアクションに繋げていくかが大きな課題となりますが,参加者がどのようなアイデアに辿り着くのかファシリテーション側もとても楽しみにしています。その後はテクノロジーとアートに関するゲスト講演を通した新しい視点の提供も続きます。今後も是非DSCの活動に注目してください。」とコメントしています。

ゲスト・ファシリテーター紹介

ゲスト

鞍田崇(明治大学 准教授)第1, 2, 4, 6回

1970年兵庫県生まれ。哲学者。京都大学大学院人間・環境学研究科修了。現在,明治大学理工学部准教授。近年は,ローカルスタンダードとインティマシーという視点から,現代社会の思想状況を問う。著作に『民藝のインティマシー 「いとおしさ」をデザインする』(明治大学出版会 2015)など。民藝「案内人」としてテレビ番組「趣味どきっ!私の好きな民藝」(NHK-Eテレ)にも出演(2018年放送)

筧康明(東京大学 教授)第4回

1979年京都生まれ.インタラクティヴ・メディア研究者/デザイナー。慶応義塾大学環境情報学部准教授,博士(学際情報学)。人間の五感や物理素材の特性とデジタル情報を掛け合わせ,身体,道具,コミュニケーションを拡張するインタラクティヴ・メディアを開発する。エンジニアリング/アート/デザインの分野をまたがって活動を展開し,シーグラフ,アルス・エレクトロニカ・フェスティヴァルなどでの展示や平成26年度科学技術分野の文部科学大臣表彰若手科学者賞や2012年グッドデザイン賞BEST100などを受賞。また,アートユニットplaplaxとして,主に商業分野におけるメディア・テクノロジー/表現の展開可能性を開拓する。

ファシリテーター

田村大(Re:Public inc.)

神奈川県生まれ。幼少期を福岡県・小倉で過ごす。東京大学大学院学際情報学府博士課程単位取得退学。新卒で博報堂に入社後,デジタル社会の研究・事業開発等を経て,株式会社リ・パブリックを設立。欧米・東アジアのクリエイティブ人脈を背景に,国内外で産官学民を横断した社会変革・市場創造のプロジェクトを推進している。2014年,福岡に移住し,九州を中心とした活動に移行。2018年より鹿児島県薩摩川内市にて,「サーキュラーシティ」の実現に向け取り組んでいる。現在,九州大学,北陸先端科学技術大学院大学にて客員教授を兼任。

大山貴子(fog inc.)

ニューヨークにて新聞社,EdTechでの海外戦略,編集&ライティング業を経て,2015年に帰国。 日本における食の安全や環境面での取組みの必要性を感じ,100BANCH入居プロジェクトとしてフードロスを考える各種企画やワークショップ開発を実施後,サーキュラーエコノミーの実現を目的としたデザインコンサルティング会社,株式会社fogを創業。「循環をつくる( )をつくる会社」として,サーキュラーエコノミー及び循環型社会の実装を,人材・組織開発から行う。直近では,10月末にオープンしたキッチンやリビングラボを兼ね備えた施設「循環する日常をえらぶラボ "élab"(えらぼ)」を東京都台東区にオープンさせ,暮らしにおける循環の実践を行っている。

開催概要

実施場所:宮城大学 大和キャンパス デザイン研究棟1F(9/30フィールドワークを除く)

9月23日(土)12:00 - 17:00 レクチャー1(田村大+鞍田崇)とキックオフ(大山氏)
9月30日(土)9:20 - 20:30 フィールドリサーチ:工房ストロー+吉野デザイン事務所
10月6日(金)18:00 - 19:30 ワーク①
10月21日(土)13:00 - 17:00 レクチャー2(鞍田崇+筧康明)および中間講評
10月27日(金)18:00 - 19:30 ワーク②
11月3日(金祝)13:00 - 17:00 最終講評会(田村大+鞍田崇)
デザイン思考WSシリーズ担当教員
  • 佐藤 宏樹:事業構想学群准教授
  • 土岐 謙次:事業構想学群教授
  • 本江 正茂:事業構想学群教授
  • 貝沼 泉実:事業構想学群特任助教
  • 小松 大知:事業構想学群特任助教

宮城大学デザインスタディセンター

デザインを通して,新しい価値をどう生み出していくか。日々変化する社会環境を観察し,多様な課題を解決へと導く論理的思考力と表現力,“デザイン思考” は,宮城大学で学ぶ全ての学生に必要とされる考え方です。ビジネスにおける事業のデザイン,社会のデザイン,生活に関わるデザインなど 3学群を挙げてこれらを担う人材を育成するため,その象徴として 2020 年にデザイン研究棟が完成,学群を超えた知の接続/地域社会との継続的な共創/学外の先進的な知見の獲得を目指して,企業との共同プロジェクトや,デザイン教育・研究を展開する「デザインスタディセンター」として,宮城大学は東北の新たなデザインの拠点をつくります。

MYU NEWS #03

宮城大学デザインスタディセンターでは,2021年の開設以来,学群の枠を超えた知の接続/地域社会との継続的な共創/学外の先進的な知見の獲得を目指し,東北の新たなデザインの拠点として,さまざまな実験的なプロジェクトが展開されています。

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