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24.08.07

11/3、DSC STUDIO 2023『未来とともにある「テマヒマ」の暮らし』Day5最終講評会を実施しました/デザインスタディセンター

宮城大学デザインスタディセンター(DSC)による『未来とともにある「テマヒマ」の暮らし』をテーマとしたデザイン教育プログラムを9月~11月にかけて展開しました。最終回となる第5回は、これまでのフィールドリサーチ・オープンレクチャ・グループワークの総括として、最終講評会は,本スタジオの共同研究を行っているアルプスアルパイン株式会社仙台開発センター(古川)のR&D新棟にて開催しました。

手を動かすことで見えることを考え、デザインの視点から未来に向けてアクションを
テーマ『未来とともにある「テマヒマ」の暮らし』

このデザイン教育プログラムは、設定されたテーマに対して“デザインとは何か”という問いを投げかけ、問題提起と活動に取り組むプロセスを通して、学生・教職員含め“デザインについて考える・デザイン思考を理解する”ことを目的としたものです。今回のテーマは『未来とともにある「テマヒマ」の暮らし』。テクノロジーや産業の進化、社会情勢の変化により、その役割や機能が日々変化している中で「手を動かす」という行為は、この先どこへ向かうのでしょうか?私たちは今、手を動かし時間と労力をかける「テマヒマ」から、どのような新しい価値を見出していくことができるでしょうか?「手を動かすこと」に潜在する可能性を探索し、『ともにある暮らしの未来』のデザインに取り組みます。

Day5:最終講評会(11月3日) スペキュラティブシナリオから2050年のテマヒマを探る

今回のスタジオのゴールは「私が語る未来の冬の豊かな暮らし」をテーマに、主人公がその様子を一人称で語るエッセイをグループごとに執筆することです。最終講評会では、これまでグループで取り組んできた成果を発表。コミュニケーションツールや祭など多様なキーワードから様々な未来が描かれたのと同時に、手を動かすことはその結果だけでなく、プロセスや付随して発生する思考の深まりなどにも意義があるという価値が明らかとなりました。

チーム①遠く離れた家族と心を通わせる手のアビリティ

主人公には2人の子供がいる。彼らは海底都市や火星に住んでいるため,直接会える機会は滅多にない。手軽だが希薄なオンラインでのやりとりに寂しさを感じる主人公は,遠隔地に住む子供達とのコミュニケーションを深めるため,思い出の写真とエピソードを合わせた「かるた」を家族で手作りすることに。̶̶̶

  • 人々の居住地域は海底や火星にまで拡大。
  • 手を動かすことと思い出や時間の共有の相乗効果によって生まれる心を通わすコミュニケーションの可能性。

チーム②手仕事を通じて日常に彩りのある生活を

2050年に生きる主人公は,とあるアクシデントにより2010年へタイムスリップ。故郷で地域活性化やブランド化に取り組むなかで,稲藁を使った緩衝材や段ボールなどの商品開発をきっかけに,「連鎖するぬくもり ー藁から人へ 人から人へー」をミッションに掲げるブランド「hatano」を設立する。̶̶̶̶

  • スマートシティの進化により自らの意思を反映させにくい社会や暮らしへの不満。
  • 自分や地域の色を持つことの重要性。
  • 生産と消費が循環する社会の構築。

チーム③手仕事とテクノロジーが調和した2050年

現在主人公は,メンタルヘルス改善に効果があるという「地域ショートステイプログラム」にて秋田県上小阿仁村に滞在し様々な手仕事に取り組む。この村では,マタギ文化をAI技術によって効率化し,新たな生業としての継続を目指したプロジェクトなど,スマートシティ構築のための取り組みも展開されている。̶̶

  • 地方の過疎化進行を契機としたスマートシティ構築の社会実験の推進。
  • 手間暇による手のアビリティ向上。
  • 有限資産から無限資産中心化への変化。

チーム④手仕事がつなぐ想いとコミュニティ

てまひ町の「手間火祭」では,地域住民が藁でモニュメントを作って燃し,子供の成長を祈願する。この町出身の主人公は父が行う藁細工を疎ましく感じていたが,娘や住民の楽しそうな姿を見て,自らも作業に参加するように。これがきっかけとなり,人々の願いや思いを繋ぐという祭りの真の意義を見出していく。̶

  • 手仕事において,作られる物以外の意味や価値を問いに設定し,祈りとプロセス自体にフォーカス。
  • 共同での手仕事によるコミュニティの形成。

チーム⑤世界の解像度を上げる「百姓思考」

主人公の息子が通う高校では「百姓思考教育」が行われている。これは百姓の暮らしからヒントを得た,あらゆる物事は集合知の産物であるとの考えに基づいた教育である。工夫と想像を繰り返しにより物事の真意に向き合うことが未来の想像に繋がると考えられており,2050年では一般的な教育スタイルだ。̶̶̶̶

  • 工夫≒創造のプロセスを獲得した人材の創出。
  • 地域ならではの暮らしの考え方を教育に取り入れることにより創造的な教育の先駆者となる東北の未来。

当初は世代や分野間での価値観の違いに戸惑っていた参加者も,それにより得られた新たな視点を活かし,アイデアを昇華させていきました。また、最終講評では「未来に突き抜けるために,手を動かして思考を深めることを大切にし続けてほしい」と教員らの言葉で締め括られました。

(参加者コメント)

  • 同じプロセスを経てアイデアを検討しているにも関わらず,人やチームによりアウトプットに違いがあり,しかしその中にも共通要素が表出していることが面白いと感じた。(学生)
  • 社会人と学生の混合グループでの活動により,自分には無い視点や他者の考え方に触れられて良かった。(学生)
  • 自分の仕事と直接関係のないことも積極的に学び続けたい。(学生)
  • スタジオのテーマとその背景に対し,当初違和感を感じていたことから,これまでいかに近い価値観の人々の中で生きてきたかを痛感した。(社会人)
  • 世の中ある様々な要因を掘り起こし,繋げて球根にして花を咲かせるように,物事を深く広くしっかりと見る事が重要であると改めて感じた。(社会人)

デザインスタディセンター担当教員である佐藤宏樹准教授は「今回のスタジオは、『真に豊かな未来の暮らしとは何か?』という問いから始まり、地域資源や私たち誰もが持っている『手を動かすこと』の再解釈にその解を求めました。未来の生活を知るために、私たちは今の生活の何を知っていて何を知らないのか。2回のレクチャーや、フィールドリサーチ、中間講評から最終講評を経て、悩みながらも着実に理解していけたのではないかと思います。DSCでは昨年度は全3回、今年度はボリュームアップした全1回のオープンスタジオを開講しました。学生と社会人が垣根なく参加できる場を目指して模索を続けています。2024年度も充実したスタジオやイベントを開講予定です。学内に留まらず地域の企業やクリエイターの皆様にも集っていただき、共に学ぶ場所を一緒に作り上げていきたいと思っています」とコメントしています。

ゲスト・ファシリテーター紹介

ゲスト

鞍田崇(明治大学 准教授)第1, 2, 4, 6回

1970年兵庫県生まれ。哲学者。京都大学大学院人間・環境学研究科修了。現在、明治大学理工学部准教授。近年は、ローカルスタンダードとインティマシーという視点から、現代社会の思想状況を問う。著作に『民藝のインティマシー 「いとおしさ」をデザインする』(明治大学出版会 2015)など。民藝「案内人」としてテレビ番組「趣味どきっ!私の好きな民藝」(NHK-Eテレ)にも出演(2018年放送)

筧康明(東京大学 教授)第4回

1979年京都生まれ.インタラクティヴ・メディア研究者/デザイナー。慶応義塾大学環境情報学部准教授、博士(学際情報学)。人間の五感や物理素材の特性とデジタル情報を掛け合わせ、身体、道具、コミュニケーションを拡張するインタラクティヴ・メディアを開発する。エンジニアリング/アート/デザインの分野をまたがって活動を展開し、シーグラフ、アルス・エレクトロニカ・フェスティヴァルなどでの展示や平成26年度科学技術分野の文部科学大臣表彰若手科学者賞や2012年グッドデザイン賞BEST100などを受賞。また、アートユニットplaplaxとして、主に商業分野におけるメディア・テクノロジー/表現の展開可能性を開拓する。

ファシリテーター

田村大(Re:Public inc.)

神奈川県生まれ。幼少期を福岡県・小倉で過ごす。東京大学大学院学際情報学府博士課程単位取得退学。新卒で博報堂に入社後、デジタル社会の研究・事業開発等を経て、株式会社リ・パブリックを設立。欧米・東アジアのクリエイティブ人脈を背景に、国内外で産官学民を横断した社会変革・市場創造のプロジェクトを推進している。2014年、福岡に移住し、九州を中心とした活動に移行。2018年より鹿児島県薩摩川内市にて、「サーキュラーシティ」の実現に向け取り組んでいる。現在、九州大学、北陸先端科学技術大学院大学にて客員教授を兼任。

大山貴子(fog inc.)

ニューヨークにて新聞社、EdTechでの海外戦略、編集&ライティング業を経て、2015年に帰国。 日本における食の安全や環境面での取組みの必要性を感じ、100BANCH入居プロジェクトとしてフードロスを考える各種企画やワークショップ開発を実施後、サーキュラーエコノミーの実現を目的としたデザインコンサルティング会社、株式会社fogを創業。「循環をつくる( )をつくる会社」として、サーキュラーエコノミー及び循環型社会の実装を、人材・組織開発から行う。直近では、10月末にオープンしたキッチンやリビングラボを兼ね備えた施設「循環する日常をえらぶラボ "élab"(えらぼ)」を東京都台東区にオープンさせ、暮らしにおける循環の実践を行っている。

開催概要

実施場所:宮城大学 大和キャンパス デザイン研究棟1F(9/30フィールドワークを除く)

9月23日(土)12:00 - 17:00 レクチャー1(田村大+鞍田崇)とキックオフ(大山氏)
9月30日(土)9:20 - 20:30 フィールドリサーチ:工房ストロー+吉野デザイン事務所
10月6日(金)18:00 - 19:30 ワーク①
10月21日(土)13:00 - 17:00 レクチャー2(鞍田崇+筧康明)および中間講評
10月27日(金)18:00 - 19:30 ワーク②
11月3日(金祝)13:00 - 17:00 最終講評会(田村大+鞍田崇)
デザイン思考WSシリーズ担当教員
  • 佐藤 宏樹:事業構想学群准教授
  • 土岐 謙次:事業構想学群教授
  • 本江 正茂:事業構想学群教授
  • 貝沼 泉実:事業構想学群特任准教授
  • 小松 大知:事業構想学群特任助教

宮城大学デザインスタディセンター

デザインを通して、新しい価値をどう生み出していくか。日々変化する社会環境を観察し、多様な課題を解決へと導く論理的思考力と表現力、“デザイン思考” は、宮城大学で学ぶ全ての学生に必要とされる考え方です。ビジネスにおける事業のデザイン、社会のデザイン、生活に関わるデザインなど 3学群を挙げてこれらを担う人材を育成するため、その象徴として 2020 年にデザイン研究棟が完成、学群を超えた知の接続/地域社会との継続的な共創/学外の先進的な知見の獲得を目指して、企業との共同プロジェクトや、デザイン教育・研究を展開する「デザインスタディセンター」として、宮城大学は東北の新たなデザインの拠点をつくります。

MYU NEWS #03

宮城大学デザインスタディセンターでは、2021年の開設以来、学群の枠を超えた知の接続/地域社会との継続的な共創/学外の先進的な知見の獲得を目指し、東北の新たなデザインの拠点として、さまざまな実験的なプロジェクトが展開されています。


MYU Design Study Center STUDIO REPORT 2022

宮城大学デザインスタディセンターの2022年度の活動をまとめた冊子です。2022年度は、宮城大学全体の教育方針に含まれる「デザイン思考」、大学のもつ3学群の「知の接続」、開かれた共創の場を目指した「地域社会との連携」をテーマに計画された3つのスタジオを開講しました。

  • STUDIO 1『(ロゴ)デザインのプロセス』:スタイリングと誤解されがちなグラフィックデザインの役割をとらえ直し、コミュニケーションツールとして用いるためのデザインプロセスを体験。
  • STUDIO 2『肉の未来』:肉という生活に密着したテーマがもつ現代的な問題の広がりに触れ,デザインの視点から私たちがとるべきアクションを模索しました。
  • STUDIO 3『地域文化の再構築と発信』:近年注目が高まる一方で多様な課題を抱える地域文化の情報発信を、編集の視点から考えました。いずれのスタジオでも社会の第一線で活躍する実務家をゲストに招き、レクチャーとフィールドリサーチを含む実践的なプログラムを体験することで、発展的な学びを学内外の参加者で共有することができました。

MYU Design Study Center STUDIO REPORT 2023-2024

宮城大学デザインスタディセンターの2023年度の活動をまとめた冊子です。2023年度は、DSCとアルプスアルパイン株式会社の共同研究の一環として企画・開発されたスタジオワークショップと、DSCの過去3年間の活動を総括する展示・シンポジウムを実施しました。

  • STUDIO 未来とともにある「テマヒマ」の暮らし:スタジオワークショップのテーマは「手を動かすこと」。イノベーションのトッププレーヤーのファシリテーションのもと、文化人類学(伝統)やテクノロジー・アート(現代)の専門家によるゲストトーク、地域の先進的な思想を訪ねるフィールドワークを交え、デザインの視点から未来の社会に向けてアクションを起こす姿勢を学びました。
  • EXHIBITION / SYMPOSIUM「デザインで東北から未来を想像する」:「デザイン」をキーワードとした体験展示・アーカイブ展示と、「デザイン研究教育とオープンイノベーション」をテーマとしたシンポジウムを開催。これまでのDSCの試みから導かれた、東北におけるデザインとの向き合い方におけるヒントが示されました。

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