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22.08.22
慢性腎臓病で新型コロナウイルス感染症が重症化するメカニズムのひとつを明らかに/看護学群・風間逸郎教授
看護学群に所属する風間逸郎教授は、病態生理学・内科学・一般生理学を専門分野としております。このたび、これまでの自身の研究成果をもとに“慢性腎臓病で新型コロナウイルス感染症が重症化するメカニズム”の鍵となる重要な知見を発見し、英文雑誌に報告しました。
本報告内容については、7月24日付けで, 英文雑誌(Inflammation Research: Impact factor 7.0, 風間教授が単独著者)の電子版に掲載されました。 |
※なお、風間教授はこれまでも、本学看護学群学生を指導して行ったアンケート調査や、自身のこれまでの基礎研究成果をもとに、新型コロナウイルス感染症や後遺症、ワクチン接種後の副反応に対する治療法または予防法の可能性を明らかにし、英文・和文雑誌に報告してきました。
<参考>
新型コロナウイルス感染症重症化の鍵を握る“ACE2受容体”
現在、未だに世界中で猛威を振るっている新型コロナウイルス感染症。オミクロン株の蔓延以降は、軽症のケースが比較的多いとされていますが、ワクチン接種の有無によっては重症化するケースも未だに後を絶ちません。風間教授もこれまで、新型コロナウイルス感染症が重症化する際におきる“サイトカインストーム”のメカニズムのひとつを明らかにしています。風間逸郎教授が新型コロナウイルス感染症に対する新規治療法の可能性を発見
一方で、特定の基礎疾患を持つ人で重症化が起きる原因のひとつとして、ヒト細胞の表面に存在する受容体タンパク質(ACE2受容体)の関与も明らかになってきました。新型コロナウイルスが体内に侵入する際、まず、ウイルス表面にある突起(スパイクタンパク質)が、ヒト細胞表面にあるACE2受容体と結合します。すると、このスパイクタンパク質が、同じくヒト細胞表面にある蛋白分解酵素(TMPRSS2)に切断され、活性化します。その結果、ウイルスがヒトの細胞に侵入しやすくなり、感染が起こります(図)。
ACE2やTMPRSS2は、体中の多くの細胞に発現していますが、近年の報告によると、慢性閉塞性肺疾患、気管支喘息、心不全などの基礎疾患や重度の喫煙歴のある人では、これらのタンパク質の発現が、健常人に比べて大きく増えていることが分かってきました。そして、これらのタンパク質の発現増加によって、新型コロナウイルスが臓器により侵入しやすくなり、サイトカインストームによる重症化の引き金になることが明らかになりました。
腎不全モデルを用いて、新型コロナウイルス感染症が重症化するメカニズムを発見
近年、人口の高齢化や糖尿病患者の増加に伴い、生活習慣病のひとつとして“慢性腎臓病”を患う患者さんの数が増えています。最近、実はこの慢性腎臓病も、新型コロナウイルス感染症が重症化する基礎疾患のひとつであることが明らかになり、とくに末期腎不全で血液透析を受けている患者さんでは注意が必要であると言われています。しかし、なぜ重症化しやすくなるのか、その理由までは分かっていませんでした。そこで風間教授は、腎不全モデルラットの腎臓を使って、ACE2受容体とTMPRSS2を調べたところ、腎不全が重症化すればするほど、腎臓でこれらのタンパク質の発現が増えることが分かりました(図)。
このことから、慢性腎臓病の患者さんが新型コロナウイルスに感染した場合、腎臓で発現が増加したACE2受容体とTMPRSS2を介してウイルスが体内に侵入しやすくなり、サイトカインストームによる感染症の重症化や、腎不全の悪化を招くと考えられました(図)。今後は、逆にACE2受容体をターゲットとするなどして、新型コロナウイルス感染症の重症化を防ぐ治療法の開発にもつながる可能性があります。
風間教授は今後も、臨床から発想した研究の成果を再び臨床に還元することを目標とし、日々研究に取り組んでまいります。学生さんでも教職員の方でも、風間教授と一緒に研究をやってみたい人(在学中だけでも“研究者”になってみたい人!)は、是非ご一報ください。いつでもスタンバイしてお待ちしております。
( kazamai(a)myu.ac.jp メールの際は(a)を@に変えてご連絡願います)
研究報告の詳細について
なお、本研究報告は、7月24日付けで英文雑誌(Inflammation Research: Impact factor 7.0, 風間教授が単独著者)の電子版に掲載されています。また、風間教授がこれまでに発表してきた、新型コロナウイルス感染症に関連する主な研究成果についても、別の英文/和文雑誌に掲載されています。(いずれも風間教授がCorresponding author)
- Potential prophylactic efficacy of mast cell stabilizers against COVID-19 vaccine-induced anaphylaxis | Clinical and Molecular Allergy | Full Text (biomedcentral.com)
- Does immunosuppressive property of non-steroidal anti-inflammatory drugs (NSAIDs) reduce COVID-19 vaccine-induced systemic side effects? (本学看護学群学生が共著者)
- 宮城県で発生した新型コロナウイルス感染症患者の特徴 ─第 1 波 88 名の集計から見えた問題点と今後の課題─(本学看護学群学生が筆頭著者)
- Stabilizing mast cells by commonly used drugs: a novel therapeutic target to relieve post-COVID syndrome?
- Targeting lymphocyte Kv1.3-channels to suppress cytokine storm in severe COVID-19: Can it be a novel therapeutic strategy?
これまで風間教授が本学看護学群の学生(または教員)を指導しながら発表してきた研究成果については、以下の和文・英文雑誌に掲載されています(いずれも風間教授がCorresponding author)。
- Pyridoxine Synergistically Potentiates Mast Cell-Stabilizing Property of Ascorbic Acid (cellphysiolbiochem.com) (本学看護学群卒業生が共著者)
- 気管支喘息患者に対する水泳の有用性―エビデンスに基づく看護での実践指導へ―(本学看護学群学生が筆頭著者)
- Suppressing leukocyte Kv1.3-channels by commonly used drugs: A novel therapeutic target for schizophrenia?(本学看護学群・佐藤泰啓助教が筆頭著者)
- 若年者で新型コロナワクチン接種後に起きる副反応の特徴と病態生理にもとづく対処法の検討(本学看護学群学生が筆頭著者)
- Does immunosuppressive property of non-steroidal anti-inflammatory drugs (NSAIDs) reduce COVID-19 vaccine-induced systemic side effects? (本学看護学群学生が共著者)
- 宮城県で発生した新型コロナウイルス感染症患者の特徴 ─第 1 波 88 名の集計から見えた問題点と今後の課題─(本学看護学群学生が筆頭著者)
- Insulin accelerates recovery from QRS complex widening in a frog heart model of hyperkalemia(本学看護学群学生が筆頭著者)
- 高カリウム血症に対し大腸のカリウムチャネルをターゲットとした看護的介入(本学看護学群・庄子美智子助教が筆頭著者)
- デュシェンヌ型筋ジストロフィー女性保因者が発症するメカニズムと看護での実践(本学看護学群学生が筆頭著者)
- Catechin synergistically potentiates mast cell-stabilizing property of caffeine(本学看護学群学生が筆頭著者)
- 心電図検査における人為的ミスの発生と予防―ウシガエル心電図を用いた検討―(本学看護学群学生が筆頭著者)
- 麻疹に対するビタミンA補充療法の意義と看護現場での実践(本学看護学群学生が共著者)
- Reciprocal ST segment changes reproduced in burn-induced subepicardial injury model in bullfrog heart(本学看護学群学生が共著者)
研究者プロフィール
・風間 逸郎(かざま いつろう):看護学群教授
病態生理学・内科学・一般生理学を専門分野としております。また、内科の医師として現在も患者さんの診療に携わる中での研究は、常に臨床からの発想に端を発しており、研究の成果を再び臨床に還元することを目標としてきました。そして、遺伝子レベルでの解析から、細胞、生体レベルでの解析まで行うことにより、ミクロの研究とマクロの研究とを結びつけることを常にこころがけています。
<参考>
風間逸郎教授が腎臓の線維化における新規病態メカニズムを発見
風間逸郎教授が研究指導する学生達が「心筋梗塞でおこる心電図異常のメカニズム」を証明
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麻疹(ましん)に対する新規治療法の可能性と臨床現場での有用性/風間逸郎教授が学生と報告
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