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22.10.27
若年者における3回目の新型コロナワクチン接種後の副反応の特徴を明らかに/「宮城大学こびっと隊」有志メンバーと看護学群・風間教授、相澤助手が報告
「宮城大学こびっと隊」では、本学看護学群の学生が中心となり、学内における新型コロナウイルス感染対策のための活動を行っています。このたび、看護学群・風間逸郎教授の指導の下、こびっと隊の有志メンバーの学生らと看護学群・相澤美里助手が中心となり、若年者における3回目の新型コロナワクチン接種後の副反応の特徴をまとめ和文雑誌に発表しました。
本研究報告は、10月27日付けで「医学と薬学」2022年11月号(自然科学社)に原著論文として掲載されています。今回発表した論文では、宮城大学こびっと隊の活動を主体的に進めた有志メンバーの中心である藤倉邑圭さん、平井菜々美さん、目時華恋さんらも共著者となっています。また、それをサポートしつつ、論文作成のためのデータの集約・分析を行った相澤助手が筆頭著者、風間教授が責任著者となっています。 |
本研究は、アンケートによる調査をもとに、副反応の種類や頻度、各症状の発症時期や持続期間・程度、対処法などについてデータを集約し、そのうえで先に報告した2回目接種後の副反応と比較しながら(リンク)、主な副反応が起きるメカニズムや、看護師・保健師としてできることを考察したものです。なお、風間教授は、若年者で1、2回目の新型コロナワクチン接種後に起きる副反応の特徴についても、看護学群4年生の卒業研究を指導しながら調査を行い、英文・和文雑誌に報告しています。
<参考>
新型コロナワクチン副反応に対する非ステロイド性抗炎症薬の有用性を明らかに
若年者における新型コロナワクチン接種後の副反応の特徴を明らかに
調査により明らかになった、3回目ワクチン接種後の副反応の特徴
2回目接種後と比べ①リンパ節の腫脹が多く②症状の出現が早く・程度が重い
新型コロナウイルス感染症の終息に向け、わが国でも3回目の追加ワクチン接種が進められてきました。しかし、接種直後に様々な副反応が出ることが知られており、それによって仕事や学校を休まざるを得ないなど、日常生活に大きな支障をきたしてしまうこともあります。本研究では、3回目のワクチン接種を完了した若年者を対象にアンケート調査を実施しました。
その結果、2回目のワクチン接種後と同様、接種直後の腕の痛みや腫れといった局所症状に加え、発熱・頭痛・全身倦怠感などの全身性の副反応が多く出現した回答が得られました【図1】。さらに、3回目接種後には、2回目に比べて、リンパ節の腫脹を訴える人の割合がとくに高くなっていました【図1】。
各症状の持続期間は、発症から2~3日程度と、2回目接種後と同様でしたが、発熱・頭痛・全身倦怠感などの出現時期は、接種後0~1日目と、2回目接種後に比べて早くなっており、2回目接種後と比較した場合の自覚症状の程度は、いずれの症状も重くなる傾向にありました【図2】。実際、ワクチン接種後に38℃以上の高熱を来した人の割合は、2回目接種後ではおよそ半数程度だったのに対し、3回目接種後では、8割近くにまで増えていました。
接種したワクチンの種類の違いでみると、3回目に接種したワクチンがモデルナ社製であった人では、38℃以上の高熱を来した人の割合が高く【図3】、とくに1~3回すべてモデルナ社製であった人では、全員が38℃以上の高熱を来していました【図3】。
リンパ節が腫脹するメカニズムの正体 “免疫反応”と解熱鎮痛薬の効果
今回、とくに多くの人でみられたリンパ節の腫脹については、持続期間が2~5日と、他の症状に比べて長びく傾向にありました【図4】。
さらに調査の結果、副反応の症状を緩和するために解熱剤を使った場合、非ステロイド性抗炎症薬(non-steroidal anti-inflammatory drugs: NSAIDs)とよばれるイブプロフェン、ロキソニン、アスピリンなどを含む製剤の方が、アセトアミノフェンのみを含む製剤よりも、リンパ節腫脹の持続期間を短縮させる傾向も明らかになりました。
ワクチンを接種した後、体の中ではウイルスを中和するための抗体が作られるとともに、免疫細胞の一種であるリンパ球の活動性も高まります。実際、新型コロナワクチン接種後に腫脹したリンパ節では、リンパ球が増殖していることが明らかになっています。
非ステロイド性抗炎症薬(non-steroidal anti-inflammatory drugs: NSAIDs)は、いわゆる消炎鎮痛作用に加え、免疫抑制作用をも併せ持つため、リンパ節におけるリンパ球の増殖を直接的に抑えることにより、リンパ節が腫脹する期間を短縮させた可能性が高いと考えられます。
ワクチン接種率向上のため、看護師・保健師としてできること
2022年9月現在、わが国の全人口のうち、3回目のワクチン接種を受けた人の割合は65%程度にとどまり、とくに若い世代の接種率が伸び悩んでいます。ワクチン接種を躊躇する人の中には、接種後の副反応による体調不良を不安視する人も多いといわれます。本研究の結果、3回目のワクチン接種後に起こりうる副反応の種類だけでなく、その発症時期、持続期間、自覚症状の程度まで明らかになったことで、ワクチン接種後に起こりうる体調の変化や、それに合わせた日常生活スケジュールの見通しが立てやすくなると思われます。
これまで各自治体では、看護師・保健師が主力となり、新型コロナワクチン全般や副反応に関する相談窓口を設けてきました。本研究により引き出された科学的根拠にもとづき、ワクチン接種のメリット・デメリットや副反応への対処法について、正しい知識や情報を提供することができれば、ワクチン接種に対する人々の不安を解消し、とくに若年層における接種率の向上に貢献できると考えられます。
風間教授は「今後も、臨床から発想した研究の成果を再び臨床に還元することを目標とし、日々研究に取り組んでまいります。学生さんでも教職員の方でも、一緒に研究をやってみたい人は、是非ご一報ください。在学中だけでも“研究者”になってみたい!学会で発表してみたい!論文の著者になってみたい!という人でも構いません。いつでもスタンバイしてお待ちしております」とのメッセージを寄せました。
連絡先メールアドレス:kazamai(a)myu.ac.jp
※メールの際は、(a)を@に変換ください
研究報告の詳細について
本研究報告は、10月27日付けで「医学と薬学」2022年11月号(自然科学社)でも紹介されています。なお、風間教授はこれまでも、看護学群の学生を指導しながら、新型コロナウイルス感染症や後遺症、重症化が起きるメカニズム、ワクチン接種後の副反応に対する治療法または予防法の可能性を明らかにし、英文・和文雑誌に報告してきました。また、宮城県内における新型コロナウイルス感染症患者の特徴や問題点・感染対策についてもまとめ、和文雑誌に報告しました。
<参考>
- 風風間逸郎教授が新型コロナウイルス感染症に対する新規治療法の可能性を発見
- 新型コロナウイルス感染症の“後遺症”に対する治療法を発見/風間逸郎教授
- 宮城県における新型コロナウイルス感染症患者の特徴を明らかに/風間逸郎教授が学生と報告
- 新型コロナワクチン副反応に対する非ステロイド性抗炎症薬の有用性を明らかに
- 新型コロナワクチン接種後の“アナフィラキシー”に対する予防法を発見
- 若年者における新型コロナワクチン接種後の副反応の特徴を明らかに
- 慢性腎臓病で新型コロナウイルス感染症が重症化するメカニズムのひとつを明らかに
<論文>
- Targeting ACE2 as a potential prophylactic strategy against COVID-19-induced exacerbation of chronic kidney disease
- Potential prophylactic efficacy of mast cell stabilizers against COVID-19 vaccine-induced anaphylaxis | Clinical and Molecular Allergy | Full Text (biomedcentral.com)
- 若年者で新型コロナワクチン接種後に起きる副反応の特徴と病態生理にもとづく対処法の検討(本学看護学群学生が筆頭著者)
- Does immunosuppressive property of non-steroidal anti-inflammatory drugs (NSAIDs) reduce COVID-19 vaccine-induced systemic side effects? (本学看護学群学生が共著者)
- 宮城県で発生した新型コロナウイルス感染症患者の特徴 ─第 1 波 88 名の集計から見えた問題点と今後の課題─(本学看護学群学生が筆頭著者)
- Stabilizing mast cells by commonly used drugs: a novel therapeutic target to relieve post-COVID syndrome?
- Targeting lymphocyte Kv1.3-channels to suppress cytokine storm in severe COVID-19: Can it be a novel therapeutic strategy?
宮城大学こびっと隊
「こびっと隊」は、宮城大学の有志の学生による学生団体で、新型コロナウイルス感染症対策に関する情報発信や、学内の予防・啓発活動を行っています。この動画は、学内の学生・教職員向け、予防・啓発のためにキャンパス内で公開しているものです。instagram / twitter
研究者プロフィール
・相澤 美里(あいざわ みさと):看護学群助手
学士の卒業研究で、女子中学生に対する月経の保健教育をテーマに取り組みました。現在は産前、産後ケアについてや思春期教育について関心を持っています。
・風間 逸郎(かざま いつろう):看護学群教授
病態生理学・内科学・一般生理学を専門分野としております。また、内科の医師として現在も患者さんの診療に携わる中での研究は、常に臨床からの発想に端を発しており、研究の成果を再び臨床に還元することを目標としてきました。そして、遺伝子レベルでの解析から、細胞、生体レベルでの解析まで行うことにより、ミクロの研究とマクロの研究とを結びつけることを常にこころがけています。
<参考>
風間逸郎教授が腎臓の線維化における新規病態メカニズムを発見
風間逸郎教授が研究指導する学生達が「心筋梗塞でおこる心電図異常のメカニズム」を証明
風間逸郎教授がアナフィラキシーに対する新規治療法を発見
風間逸郎教授が新型コロナウイルス感染症に対する新規治療法の可能性を発見
新型コロナウイルス感染症の“後遺症”に対する治療法を発見/風間逸郎教授
麻疹(ましん)に対する新規治療法の可能性と臨床現場での有用性/風間逸郎教授が学生と報告
心電図検査における人為的ミスの発生と予防/ 風間逸郎教授が学生と報告
風間研究室の学生が「カフェインやカテキンによる抗アレルギー作用」のメカニズムを証明
女性が筋ジストロフィー(デュシェンヌ型)を発症するメカニズムを発見
宮城県における新型コロナウイルス感染症患者の特徴を明らかに/風間逸郎教授が学生と報告
マグネシウム過剰投与が引き起こす「高マグネシウム血症」心電図変化とそのメカニズム
病態生理にもとづき、高カリウム血症に対する看護的介入方法を発見
風間教授・編集の『看護技術』10月増刊号「病態生理からひもとく水・電解質異常」発刊
看護学群・風間研究室の学生が「高カリウム血症の心電図変化とそのメカニズム」を証明
新型コロナワクチン副反応に対する非ステロイド性抗炎症薬の有用性を明らかに
新型コロナワクチン接種後の“アナフィラキシー”に対する予防法を発見
若年者における新型コロナワクチン接種後の副反応の特徴を明らかに
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気管支喘息に対する水泳の有用性を明らかに
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風間研究室で「急性下壁心筋梗塞」で起きる心電図変化とそのメカニズムを証明
慢性腎臓病で新型コロナウイルス感染症が重症化するメカニズムのひとつを明らかに