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26.07.31
看護学群4年生と風間教授が「アナフィラキシー反応に対するアドレナリンの速効性」を明らかに/看護学群
看護学群の風間逸郎教授は、病態生理学・内科学・一般生理学を専門分野としており、主要な研究のひとつとして「アレルギー疾患や臓器の線維化における肥満細胞の役割」をテーマとした研究を行っています。このたび、風間教授が卒業研究指導をしている看護学群4年生(本田ひかるさん、菅原胡桃さん、川村きなりさん、瀬川奏太さん)が「アナフィラキシー反応に対するアドレナリンの速効性」を実験的に証明しました。今回の取り組みは、本学・看護学群の学生が主体となり、一貫して本学群内で行われた基礎研究成果です。

| 本研究成果は、2026年7月29日付けで英文雑誌(Cellular Physiology and Biochemistry)(IF:インパクトファクター 2.5)に掲載されました。4人の学生たちが協働して、主体的に取り組んだことにより生まれた研究成果です。 https://cellphysiolbiochem.com/Articles/000877/PDF/000877.pdf |
アレルギーの重症型 “アナフィラキシー” のメカニズム
アナフィラキシーとは、肥満細胞(=主に粘膜組織に存在する骨髄由来の細胞で、炎症や免疫反応などの生体防御機構に重要な役割を持つ)が過剰に活性化されて放出するヒスタミンによって、全身に強いアレルギー反応が起きる状態のことです。食べ物(甲殻類・ナッツなど)、薬(抗菌薬や痛み止めなど)、ハチ毒などが引き金(アレルゲン)になって全身性の蕁麻疹や呼吸困難が起き、往々にしてショック状態にまで陥る非常に危険な病態です。
<参考>
アナフィラキシーを引き起こす主役の肥満細胞は、ヒトの血液中や、鼻などの粘膜に広く分布しています。そして、ひとたびアレルゲンとなる食べ物や薬、ハチ毒などの刺激が加わると、ヒスタミンを含んだ大量の分泌顆粒を細胞外に放出する状態に変容します(図1)。この現象は“脱顆粒現象(エキソサイトーシス)”とよばれます。

図1 肥満細胞からの脱顆粒現象
アナフィラキシー治療における第1選択薬 “アドレナリン”の作用
アナフィラキシーに対する治療では,まず何よりも、すぐにアドレナリン(エピペン、ボスミン)を筋肉注射することが大原則です。アドレナリンは血管を収縮し、心臓のはたらきを強めることによって血圧を上げるため、アナフィラキシーの症状を素早く回復させます。アドレナリンにはさらに、根本的な原因である肥満細胞からのヒスタミンの放出を、予防的に抑えるはたらき(肥満細胞安定化作用)もあります。
<参考>
風間研究室で「マグネシウムの抗アレルギー効果とアナフィラキシー治療への有用性」を明らかに/看護学群
しかし、このような予防的なはたらきに加え、アドレナリンが投与直後から、このような肥満細胞安定化作用を発揮するのかどうかについては、これまで分かっていませんでした。
アドレナリンのほか、気管拡張薬のサルブタモールも速やかに肥満細胞の脱顆粒を抑えることを発見
そこで今回の研究では、ラットの体内より採取した肥満細胞に対し、脱顆粒を起こすための刺激を与えた直後にアドレナリンを投与し、その程度を調べました。その結果、アドレナリンは、投与直後から用量に比例して脱顆粒を抑制するという結果が明らかになり、速効性の肥満細胞安定化作用を有することが分かりました(図2)。

図2.アドレナリンによる脱顆粒抑制
(文献:Honda H, Kazama I et al. Cell Physiol Biochem 2026より引用)
本研究ではさらに、本来、アナフィラキシーや気管支喘息で起きる気道の狭窄に対して用いられる吸入薬;サルブタモール(ベネトリン)にも、高濃度であれば同様の脱顆粒抑制効果があり、肥満細胞を安定化させることが明らかになりました(図3)。

図3 サルブタモールによる脱顆粒抑制
(文献:Honda H, Kazama I et al. Cell Physiol Biochem 2026より引用)
医療や看護の現場における本研究成果の意義
アドレナリンやサルブタモールは、いずれもアナフィラキシーに対する治療薬として用いられていますが、主にアナフィラキシー症状からの素早い回復が目的です。今回の研究成果により、アドレナリンやサルブタモールが、本来の薬理作用(血管収縮・血圧上昇作用、気管拡張作用)に加え、アナフィラキシー反応の根本的な原因である肥満細胞からの脱顆粒を抑制し、しかも速やかに治療効果を発揮することが明らかになりました(図4)。アナフィラキシーに対する治療では、一刻も早く治療薬を開始することが大原則です。今回の発見は、その重要性を、これまで以上に強く裏付けるものであるといえます。

図4 アナフィラキシーに対するアドレナリンやサルブタモールの治療効果のまとめ
(文献:Honda H, Kazama I et al. Cell Physiol Biochem 2026より引用)

研究報告の詳細について
なお、本研究報告は、2026年7月29日付けで英文雑誌(Cellular Physiology and Biochemistry)の電子版に掲載されています。なお、これまで本学看護学群の学生等を指導しながら発表してきた研究成果については、以下の和文・英文雑誌に掲載されています(いずれも風間教授が責任著者)。
- 心筋の虚血再灌流障害で起きる心電図変化についての実験的検討 (本学看護学群学生が筆頭著者)
- 高カリウム血症で起きる心電図変化についての実験的検討 (本学看護学群学生が筆頭著者)
- Bullfrog heart model reproducing electrocardiographic changes of lateral wall myocardial infarction (本学看護学群学生が筆頭著者)
- 急性心筋梗塞で起きる鏡像変化についての実験的検討(本学看護学群学生が筆頭著者)
- ACE2 Expression in the Kidneys of Pregnant and Postpartum Rats: Physiological and Pathological Significance During Pregnancy (本学看護学群学生が筆頭著者)
- Lemon Juice and Peel Constituents Potently Stabilize Rat Peritoneal Mast Cells cellphysiolbiochem.com/Articles/000723/ (本学看護学群学生が筆頭著者)
- 若年者で新型コロナウイルス感染後に長引く症状の特徴(本学看護学群学生が筆頭著者)
- Sodium bicarbonate and salbutamol facilitate recovery from hyperkalemia-induced electrocardiogram abnormalities in bullfrog hearts(本学看護学群学生が筆頭著者)
- Prazosin potentiates mast cell-stabilizing property of adrenaline(東北大学大学院生が筆頭著者)
- ウシガエル急性下壁心筋梗塞モデルにおける心電図変化のメカニズム(本学看護学群学生が筆頭著者)
- Amitriptyline intoxication in bullfrogs causes widening of QRS complexes in electrocardiogram(本学看護学群学生が筆頭著者)
- Cetirizine more potently exerts mast cell-stabilizing property than diphenhydramine(本学看護学群学生が筆頭著者)
- 第6波と第7波で新型コロナウイルス陽性の若年者における症状の比較(本学職員・看護学群教員が共著者)
- 若年者で新型コロナワクチン3回目接種後に起きる副反応の特徴―2回目接種後との比較―(本学看護学群学生・教員が筆頭著者)
- Subepicardial burn injuries in bullfrog heart induce ECG changes mimicking inferior wall myocardial infarction(本学看護学群学生・教員が共著者)
- Pyridoxine synergistically potentiates mast cell-stabilizing property of ascorbic acid(本学看護学群学生が共著者)
- 気管支喘息患者に対する水泳の有用性―エビデンスに基づく看護での実践指導へ―(本学看護学群学生が筆頭著者)
- Suppressing leukocyte Kv1.3-channels by commonly used drugs: A novel therapeutic target for schizophrenia?(本学看護学群・佐藤泰啓助教が筆頭著者)
- 若年者で新型コロナワクチン接種後に起きる副反応の特徴と病態生理にもとづく対処法の検討(本学看護学群学生が筆頭著者)
- Does immunosuppressive property of non-steroidal anti-inflammatory drugs (NSAIDs) reduce COVID-19 vaccine-induced systemic side effects? (本学看護学群学生が共著者)
- 宮城県で発生した新型コロナウイルス感染症患者の特徴 ─第 1 波 88 名の集計から見えた問題点と今後の課題─(本学看護学群学生が筆頭著者)
- Insulin accelerates recovery from QRS complex widening in a frog heart model of hyperkalemia(本学看護学群学生が筆頭著者)
- 高カリウム血症に対し大腸のカリウムチャネルをターゲットとした看護的介入(本学看護学群・庄子美智子助教が筆頭著者)
- デュシェンヌ型筋ジストロフィー女性保因者が発症するメカニズムと看護での実践(本学看護学群学生が筆頭著者)
- Catechin synergistically potentiates mast cell-stabilizing property of caffeine(本学看護学群学生が筆頭著者)
- 心電図検査における人為的ミスの発生と予防―ウシガエル心電図を用いた検討―(本学看護学群学生が筆頭著者)
- 麻疹に対するビタミンA補充療法の意義と看護現場での実践(本学看護学群学生が共著者)
- Reciprocal ST segment changes reproduced in burn-induced subepicardial injury model in bullfrog heart(本学看護学群学生が共著者)
指導教員プロフィール
・風間 逸郎(かざま いつろう):看護学群教授
病態生理学・内科学・一般生理学を専門分野としております。また、内科の医師として現在も患者さんの診療に携わる中での研究は、常に臨床からの発想に端を発しており、研究の成果を再び臨床に還元することを目標としてきました。そして、遺伝子レベルでの解析から、細胞、生体レベルでの解析まで行うことにより、ミクロの研究とマクロの研究とを結びつけることを常にこころがけています。

<参考>
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風間教授と看護学群4年生が「急性心筋梗塞治療後の“虚血再灌流障害”で起きうる心電図変化のメカニズム」を明らかに/看護学群
- 風間教授と看護学群4年生が「急性側壁心筋梗塞」で起きる心電図変化とメカニズムを明らかに
- 風間教授が新型コロナワクチン接種後に起きうる副反応について執筆/英文書籍「The Palgrave Encyclopedia of Disability」
- 風間教授と看護学群4年生が「レモンやその成分による抗アレルギー作用」のメカニズムを解明
- 風間教授が高齢者でカリウム代謝異常症が起きやすいメカニズムのひとつを明らかに
- 第101回日本生理学会大会で看護学群4年生が学生ポスター賞を受賞「高カリウム血症の心電図変化と急性期治療薬の作用メカニズム」
- 若年者で新型コロナウイルス感染後に長引く症状の特徴を明らかに/看護学群・風間教授の指導の下、看護学群4年生と宮城大学事務局が共同で調査
- 高カリウム血症の心電図変化と急性期治療薬の効果を明らかに
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