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24.01.05
若年者で新型コロナウイルス感染後に長引く症状の特徴を明らかに/看護学群・風間教授の指導の下、看護学群4年生と宮城大学事務局が共同で調査
看護学群4年生・小林かな惠さんと本学事務局学務課・山﨑拓哉主事が、看護学群・風間 逸郎教授の指導の下、若年者で新型コロナウイルス感染後に長引く症状の特徴を明らかにしました。これら考察が和文雑誌に発表されましたのでお知らせいたします。
山﨑主事
本研究報告は、12月27日付けで「医学と薬学」2024年1月号(自然科学社)に原著論文として掲載されています。小林さんが“若年者で新型コロナウイルス感染後に長引く症状の特徴”をテーマとした卒業研究を行うにあたり、山﨑主事と共同で調査、風間教授がその指導を行いまとめたものです。 今回、和文雑誌に発表した論文では、小林さんと山﨑主事が共同で筆頭著者、研究に協力した看護学群教員が共著者、風間教授が責任著者となっています。 今回の取り組みは、宮城大学の教(教員)・職(職員)・学(学生)の協働により成し遂げられた、大変貴重な研究成果です。 |
後遺症まで至らなくとも、新型コロナウイルス感染後に特定の症状が長引く場合がある
若年者が新型コロナウイルスに感染した場合、ほとんどのケースでは時間経過とともに症状が改善していきますが、中には全身倦怠感や息切れ、集中力低下、脱毛などの症状が長期間持続するケースもあります。2ヶ月以上続けば「罹患後症状(いわゆる後遺症)」であると診断されますが、実際には後遺症とまでは至らなくても、普通感冒よりは多彩で強い症状が長期間続き、日常生活への支障を余儀なくされてしまった人も多いと思います。
調査により明らかになった、新型コロナウイルス感染後に長引く症状の特徴
①咳、全身倦怠感、精神・神経症状を中心に
②感染者の2割で1ヶ月以上続き
③症状の出現は遅いが、程度は重い
本調査の結果、新型コロナウイルスに感染した若年者では、発熱や喉の痛み・違和感、咳、全身倦怠感、嗅覚・味覚障害、筋肉痛に加え、集中力・思考力の低下、抑うつ傾向、記憶力の低下といった精神・神経症状も多く認められました(図1)。
そして、感染者の約2割では、いずれかの症状、とくに咳、息切れなどの呼吸器症状や全身倦怠感、精神・神経症状が1ヶ月以上持続していました(図2)。中でも精神・神経症状は2ヶ月以上持続する割合が高くなっており(図2)、症状が長引く人の中には、実際に“後遺症”や“ブレインフォグ”を来している人も一定数いることが分かりました。
さらに、これらの長引く症状は、喉の痛みや発熱などの初発症状より少し遅れて出現することが多く(図3、4)、自覚症状の程度は、普通感冒やインフルエンザに罹患時よりも重い傾向にありました。
感染後に症状が長引きやすい人、精神・神経症状を合併しやすい人の傾向が明らかに
さらに調査の結果、以下のことがわかりました。
- いずれかの症状が1ヶ月以上持続した人とそうでない人との間で、ワクチン接種回数や、最後のワクチン接種時期から感染までの期間に差はありませんでした(図5)。
- 感染後に出現した症状の数(種類)や、インフルエンザ罹患時より重い症状の数については、いずれかの症状が1ヶ月以上持続した人で多い傾向にありました(図5)。
- いずれかの症状が1ヶ月以上持続した人では、アレルギー疾患(花粉症、通年性アレルギー性鼻炎、蕁麻疹、気管支喘息、アトピー性皮膚炎、食物アレルギーなど)のある割合が高い傾向にありました。
- 逆に、運動習慣(1回30分以上の運動を週2回以上実施している)や健康的な食習慣(1日3食、3大栄養素をバランスよく適量摂取している)のある割合が低い傾向にありました(図5)。同様の傾向は、精神・神経症状があった人と、そうでない人との間でも認められました。
感染後に長引く症状や精神・神経症状を防ぐため、看護師・保健師としてできること
新型コロナウイルス感染後、急性期を過ぎても症状が長引く場合、または精神・神経症状を合併した場合には、日常生活への支障が大きくなります。しかしこれらの症状に対しては、未だに対症療法が主に行われており、時間の経過とともに自然治癒するのを辛抱強く待つしかありません。本研究の結果から、運動習慣や健康的な食習慣への改善によっても、長いびく症状や精神・神経症状を予防できる可能性が高いことが明らかになりました(図6)。また、感染後に強く多彩な症状を呈したり、もともとアレルギー疾患があったりする場合には、症状の長期化や精神・神経症状の合併を予測することもできます(図6)。新しい治療薬を開発する以外にも、病態生理にもとづき、日常生活の中で実践可能な予防手段を考えていくことも、医療従事者にとって大切な務めであるといえます。
風間教授は「今後も、臨床から発想した研究の成果を再び臨床に還元することを目標とし、日々研究に取り組んでまいります。学生さんでも教職員の方でも、一緒に研究をやってみたい!在学中だけでも“研究者”になってみたい!学会で発表してみたい!論文の著者になってみたい!という人は是非ご一報ください」とのメッセージを寄せました。
研究報告の詳細について
本研究報告は、12月27日付けで「医学と薬学」2024年1月号(自然科学社)でも紹介されています。なお、風間教授はこれまでも、看護学群の学生を指導しながら、新型コロナウイルス感染症や後遺症、重症化が起きるメカニズム、ワクチン接種後の副反応に対する治療法または予防法の可能性を明らかにし、英文・和文雑誌に報告してきました。
<参考>
- 新型コロナウイルス感染症の後遺症でおきる“ブレインフォグ”のメカニズムのひとつを報告
- 新型コロナウイルス感染症の第6波と第7波における若年者の症状の特徴を明らかに
- 若年者における3回目の新型コロナワクチン接種後の副反応の特徴を明らかに
- 慢性腎臓病で新型コロナウイルス感染症が重症化するメカニズムのひとつを明らかに
- 若年者における新型コロナワクチン接種後の副反応の特徴を明らかに
- 新型コロナワクチン接種後の“アナフィラキシー”に対する予防法を発見
- 新型コロナワクチン副反応に対する非ステロイド性抗炎症薬の有用性を明らかに
- 宮城県における新型コロナウイルス感染症患者の特徴を明らかに/風間逸郎教授が学生と報告
- 新型コロナウイルス感染症の“後遺症”に対する治療法を発見/風間逸郎教授
- 風間逸郎教授が新型コロナウイルス感染症に対する新規治療法の可能性を発見
<論文>
- Brain Leukocytes as the Potential Therapeutic Target for Post-COVID-19 Brain Fog | Neurochemical Research (springer.com)
- 新型コロナイウルス感染の第7波と8波で陽性となった若年者の症状の特徴(本学職員・看護学群教員が共著者)
- 第6波と第7波で新型コロナウイルス陽性の若年者における症状の比較(本学職員・看護学群教員が共著者)
- 若年者で新型コロナワクチン3回目接種後に起きる副反応の特徴―2回目接種後との比較―(本学看護学群学生・教員が筆頭著者)
- Targeting ACE2 as a potential prophylactic strategy against COVID-19-induced exacerbation of chronic kidney disease | Inflammation Research (springer.com)
- Potential prophylactic efficacy of mast cell stabilizers against COVID-19 vaccine-induced anaphylaxis | Clinical and Molecular Allergy | Full Text (biomedcentral.com)
- 若年者で新型コロナワクチン接種後に起きる副反応の特徴と病態生理にもとづく対処法の検討(本学看護学群学生が筆頭著者)
- Does immunosuppressive property of non-steroidal anti-inflammatory drugs (NSAIDs) reduce COVID-19 vaccine-induced systemic side effects? (本学看護学群学生が共著者)
- 宮城県で発生した新型コロナウイルス感染症患者の特徴 ─第 1 波 88 名の集計から見えた問題点と今後の課題─(本学看護学群学生が筆頭著者)
- Stabilizing mast cells by commonly used drugs: a novel therapeutic target to relieve post-COVID syndrome?
- Targeting lymphocyte Kv1.3-channels to suppress cytokine storm in severe COVID-19: Can it be a novel therapeutic strategy?
研究者プロフィール
・風間 逸郎(かざま いつろう):看護学群教授
病態生理学・内科学・一般生理学を専門分野としております。また、内科の医師として現在も患者さんの診療に携わる中での研究は、常に臨床からの発想に端を発しており、研究の成果を再び臨床に還元することを目標としてきました。そして、遺伝子レベルでの解析から、細胞、生体レベルでの解析まで行うことにより、ミクロの研究とマクロの研究とを結びつけることを常にこころがけています。
<参考>
- 若年者で新型コロナウイルス感染後に長引く症状の特徴を明らかに/看護学群・風間教授の指導の下、看護学群4年生と宮城大学事務局が共同で調査
- 高カリウム血症の心電図変化と急性期治療薬の効果を明らかに
- 急性下壁心筋梗塞で起きる心電図の“鏡像変化”のメカニズムを明らかに
- 新型コロナウイルス感染症の後遺症でおきる“ブレインフォグ”のメカニズムのひとつを報告
- 病態生理にもとづき、高カリウム血症に対する新規治療法について報告
- 三環系抗うつ薬(アミトリプチリン)中毒で起きる心電図変化とそのメカニズムを明らかに
- 新型コロナウイルス感染症の第6波と第7波における若年者の症状の特徴を明らかに
- 抗ヒスタミン薬による抗アレルギー作用の新たなメカニズムを明らかに
- 若年者における3回目の新型コロナワクチン接種後の副反応の特徴を明らかに
- 慢性腎臓病で新型コロナウイルス感染症が重症化するメカニズムのひとつを明らかに
- 風間研究室で「急性下壁心筋梗塞」で起きる心電図変化とそのメカニズムを証明
- 風間教授が卒業研究の学生と「ビタミン類が有する抗アレルギー作用」のメカニズムを解明
- 気管支喘息に対する水泳の有用性を明らかに
- 風間逸郎教授と佐藤泰啓助教が、統合失調症に対する新規治療法の可能性を明らかに
- 「第99回日本生理学会大会」/看護学群学生3名と助手1名も筆頭演者として発表
- 若年者における新型コロナワクチン接種後の副反応の特徴を明らかに
- 新型コロナワクチン接種後の“アナフィラキシー”に対する予防法を発見
- 新型コロナワクチン副反応に対する非ステロイド性抗炎症薬の有用性を明らかに
- 看護学群・風間研究室の学生が「高カリウム血症の心電図変化とそのメカニズム」を証明
- 風間教授・編集の『看護技術』10月増刊号「病態生理からひもとく水・電解質異常」発刊
- 病態生理にもとづき、高カリウム血症に対する看護的介入方法を発見
- マグネシウム過剰投与が引き起こす「高マグネシウム血症」心電図変化とそのメカニズム
- 宮城県における新型コロナウイルス感染症患者の特徴を明らかに/風間逸郎教授が学生と報告
- 女性が筋ジストロフィー(デュシェンヌ型)を発症するメカニズムを発見
- 風間研究室の学生が「カフェインやカテキンによる抗アレルギー作用」のメカニズムを証明
- 心電図検査における人為的ミスの発生と予防/ 風間逸郎教授が学生と報告
- 麻疹(ましん)に対する新規治療法の可能性と臨床現場での有用性/風間逸郎教授が学生と報告
- 新型コロナウイルス感染症の“後遺症”に対する治療法を発見/風間逸郎教授
- 風間逸郎教授が新型コロナウイルス感染症に対する新規治療法の可能性を発見
- 風間逸郎教授がアナフィラキシーに対する新規治療法を発見
- 風間逸郎教授が研究指導する学生達が「心筋梗塞でおこる心電図異常のメカニズム」を証明
- 風間逸郎教授が腎臓の線維化における新規病態メカニズムを発見