新着情報
25.02.05
新型コロナウイルス感染症が引き起こす臓器障害について執筆/英文書籍「The Palgrave Encyclopedia of Disability」/看護学群風間教授
看護学群に所属する風間逸郎教授は、病態生理学・内科学・一般生理学を専門分野としています。これまで、看護学群の学生や事務職員と協働しながら、新型コロナウイルス感染症や後遺症、重症化が起きるメカニズムなどについて英文・和文雑誌に報告してきました。英文書籍「The Palgrave Encyclopedia of Disability」(Springer Nature社)において、風間教授が執筆するチャプター「Impact of COVID-19 on individuals with disabilities and its contribution to causing disabilities」にこれらの研究成果がまとめられていますのでお知らせします。
The Palgrave Encyclopedia of Disability | SpringerLink
The Palgrave Encyclopedia of Disability provides the most comprehensive and contemporary research from leading international scholars about specific disabilities and how our understanding of these disabilities is shaped by historical, social, legal, religious, economic, geopolitical, and cultural factors. Offering multidisciplinary insights and analysis, this encyclopedia is an authoritative guide intended for scholars and students from different medical and allied health disciplines. It is also of benefit to those who develop health policies, medical doctors, psychologists, allied health professionals, legal experts etc.
- 発行元: Springer Nature社
- 発行年月:2025年1月
- 編集: Gabriel Bennett, Emma Goodall
- DOI:https://doi.org/10.1007/978-3-031-40858-8
- eBook ISBN:9780443141591 978-3-031-40858-8
人体で起きる“障害(disability)”について、メカニズムや予防・治療法のほか、最新の研究成果や社会・文化的背景まで学際的に幅広く紹介する英文書
本書は、広く人々の健康増進に関わる医療従事者や研究者、医療系の学生を対象として、疾病・感染・外傷・加齢・気候変動・環境変化などの様々な要因によって引き起きる心身の“障害(disability)”について、症状やメカニズム、予防・治療法といった医学的な側面だけでなく、最新の研究成果や、社会・文化的な背景に至るまで幅広く、学際的に紹介・解説した英文書籍です。例えば、近年、世界中で猛威を振るった新型コロナウイルス感染症や、罹患者数が増え続けている認知症や精神疾患についても、多角的な側面から解説されています。各研究分野や臨床現場の最前線で、まさに今活躍中の世界中の専門家たちが、各章の執筆を担当しています。
風間教授の執筆したチャプター「Impact of COVID-19 on Individuals with Disabilities and Its Contribution to Causing Disabilities | SpringerLink」は“臓器の障害(disability)”という観点から、2020~2024年にかけて発表してきた新型コロナウイルス感染症の合併症や後遺症についての研究内容をまとめ、新たにメカニズムや新規治療法についての総説を加えたものです。
新型コロナ後遺症で増えてきた症状のひとつ “ブレインフォグ”のメカニズム
新型コロナ後遺症では、記憶障害、集中力低下、抑うつなどの精神・神経症状を訴えるケースも多く、“ブレインフォグ”と呼ばれています。ブレインフォグについては、ウイルスの直接浸潤や脳血管の凝固異常のほか、自己抗体など免疫系の異常が関与している可能性が明らかにされていますが、最近ではさらに、脳に“慢性炎症”がおきていることも明らかになりました。この慢性炎症に着目し、それに関わる「カリウムチャネル」が治療のターゲットになる可能性を報告しました。<参考>新型コロナウイルス感染症の後遺症でおきる“ブレインフォグ”のメカニズムのひとつを報告、他/看護学群・風間逸郎教授(2023年3.30記事)
後遺症まで至らなくとも、新型コロナウイルス感染後に“長引く精神・神経症状” の実態
若年者が新型コロナウイルスに感染した場合、ほとんどのケースでは時間経過とともに症状が改善していきますが、中には全身倦怠感や息切れ、集中力低下、脱毛などの症状が長期間持続するケースもあります。若年者を対象としたアンケート調査の結果、新型コロナ後遺症とまでは診断されなくても、精神・神経症状が長く続く若年者では、アレルギー疾患のある割合が高く、逆に、運動習慣や健康的な食習慣のある割合が低い傾向にありました。<参考>若年者で新型コロナウイルス感染後に長引く症状の特徴を明らかに/看護学群・風間教授の指導の下、看護学群4年生と宮城大学事務局が共同で調査(2024年1.5記事)
新型コロナ回復後も感染者を苦しめる後遺症において“肺の線維化”に注目
今でこそ5類感染症に移行し、世界的な流行も収束したとされる新型コロナウイルス感染症ですが、未だ、感染症から回復後に後遺症で苦しむ人たちも数多く存在しています。新型コロナ後遺症では、肺の細胞が炎症で傷ついて硬くなる“線維化”がおきており、長引く呼吸器症状(咳や息切れ)の原因ではないかと考えられるようになっています。これまでの研究成果をもとに、新型コロナ後遺症で起きる“肺の線維化”を改善できるかもしれない糸口を明らかにしました。<参考>新型コロナウイルス感染症の“後遺症”に対する治療法を発見/看護学群・風間逸郎教授(2020年11.19記事)
“慢性腎臓病”で新型コロナウイルス感染症が“重症化”するメカニズムを発見
近年、人口の高齢化や糖尿病患者の増加に伴い、生活習慣病のひとつとして“慢性腎臓病”を患う患者さんの数が増えています。最近、実はこの慢性腎臓病も、新型コロナウイルス感染症が重症化する基礎疾患のひとつであることが明らかになっています。腎不全ラットの腎臓を調べることにより、慢性腎臓病の患者さんが新型コロナウイルスに感染した場合には、腎臓で発現が増加したACE2受容体とTMPRSS2を介してウイルスが体内に侵入しやすくなり、サイトカインストームによる感染症の重症化や、腎不全の悪化を招く可能性が考えられました。<参考>慢性腎臓病で新型コロナウイルス感染症が重症化するメカニズムのひとつを明らかに/看護学群・風間逸郎教授(2022年8.22記事)
研究報告の詳細について
「The Palgrave Encyclopedia of Disability」(Springer Nature社)は2025年1月に発刊されています。なお、これまで本学看護学群で発表してきた、本執筆内容に関連する主な研究成果については、以下の英文雑誌に掲載されています。
- 若年者で新型コロナウイルス感染後に長引く症状の特徴(本学看護学群学生が筆頭著者)
- 第6波と第7波で新型コロナウイルス陽性の若年者における症状の比較(本学職員・看護学群教員が共著者)
- 宮城県で発生した新型コロナウイルス感染症患者の特徴 ─第 1 波 88 名の集計から見えた問題点と今後の課題─(本学看護学群学生が筆頭著者)
- Brain Leukocytes as the Potential Therapeutic Target for Post-COVID-19 Brain Fog | Neurochemical Research
- Targeting ACE2 as a potential prophylactic strategy against COVID-19-induced exacerbation of chronic kidney disease | Inflammation Research
- Stabilizing mast cells by commonly used drugs: a novel therapeutic target to relieve post-COVID syndrome? - PubMed
- Targeting lymphocyte Kv1.3-channels to suppress cytokine storm in severe COVID-19: Can it be a novel therapeutic strategy? - PubMed
研究者プロフィール
・風間 逸郎(かざま いつろう):看護学群教授
病態生理学・内科学・一般生理学を専門分野としております。また、内科の医師として現在も患者さんの診療に携わる中での研究は、常に臨床からの発想に端を発しており、研究の成果を再び臨床に還元することを目標としてきました。そして、遺伝子レベルでの解析から、細胞、生体レベルでの解析まで行うことにより、ミクロの研究とマクロの研究とを結びつけることを常にこころがけています。
<参考>
- 急性心筋梗塞で起きる心電図の“鏡像変化”のメカニズムを報告
- 風間教授が英文書籍「Tea in Health and Disease Prevention(2nd edition)」で、カテキンやカフェインによる抗アレルギー効果について執筆
- 風間教授と4年生が「レモンやその成分による抗アレルギー作用」のメカニズムを解明
- 風間教授が高齢者でカリウム代謝異常症が起きやすいメカニズムのひとつを明らかに
- 第101回日本生理学会大会で看護学群4年生が学生ポスター賞を受賞「高カリウム血症の心電図変化と急性期治療薬の作用メカニズム」
- 若年者で新型コロナウイルス感染後に長引く症状の特徴を明らかに/看護学群・風間教授の指導の下、看護学群4年生と宮城大学事務局が共同で調査
- 高カリウム血症の心電図変化と急性期治療薬の効果を明らかに
- 急性下壁心筋梗塞で起きる心電図の“鏡像変化”のメカニズムを明らかに
- 新型コロナウイルス感染症の後遺症でおきる“ブレインフォグ”のメカニズムのひとつを報告
- 病態生理にもとづき、高カリウム血症に対する新規治療法について報告
- 三環系抗うつ薬(アミトリプチリン)中毒で起きる心電図変化とそのメカニズムを明らかに
- 新型コロナウイルス感染症の第6波と第7波における若年者の症状の特徴を明らかに
- 抗ヒスタミン薬による抗アレルギー作用の新たなメカニズムを明らかに
- 若年者における3回目の新型コロナワクチン接種後の副反応の特徴を明らかに
- 慢性腎臓病で新型コロナウイルス感染症が重症化するメカニズムのひとつを明らかに
- 風間研究室で「急性下壁心筋梗塞」で起きる心電図変化とそのメカニズムを証明
- 風間教授が卒業研究の学生と「ビタミン類が有する抗アレルギー作用」のメカニズムを解明
- 気管支喘息に対する水泳の有用性を明らかに
- 風間逸郎教授と佐藤泰啓助教が、統合失調症に対する新規治療法の可能性を明らかに
- 「第99回日本生理学会大会」/看護学群学生3名と助手1名も筆頭演者として発表
- 若年者における新型コロナワクチン接種後の副反応の特徴を明らかに
- 新型コロナワクチン接種後の“アナフィラキシー”に対する予防法を発見
- 新型コロナワクチン副反応に対する非ステロイド性抗炎症薬の有用性を明らかに
- 看護学群・風間研究室の学生が「高カリウム血症の心電図変化とそのメカニズム」を証明
- 風間教授・編集の『看護技術』10月増刊号「病態生理からひもとく水・電解質異常」発刊
- 病態生理にもとづき、高カリウム血症に対する看護的介入方法を発見
- マグネシウム過剰投与が引き起こす「高マグネシウム血症」心電図変化とそのメカニズム
- 宮城県における新型コロナウイルス感染症患者の特徴を明らかに/風間逸郎教授が学生と報告
- 女性が筋ジストロフィー(デュシェンヌ型)を発症するメカニズムを発見
- 風間研究室の学生が「カフェインやカテキンによる抗アレルギー作用」のメカニズムを証明
- 心電図検査における人為的ミスの発生と予防/ 風間逸郎教授が学生と報告
- 麻疹(ましん)に対する新規治療法の可能性と臨床現場での有用性/風間逸郎教授が学生と報告
- 新型コロナウイルス感染症の“後遺症”に対する治療法を発見/風間逸郎教授
- 風間逸郎教授が新型コロナウイルス感染症に対する新規治療法の可能性を発見
- 風間逸郎教授がアナフィラキシーに対する新規治療法を発見
- 風間逸郎教授が研究指導する学生達が「心筋梗塞でおこる心電図異常のメカニズム」を証明
- 風間逸郎教授が腎臓の線維化における新規病態メカニズムを発見