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新着情報

24.04.30

第101回日本生理学会大会で看護学群4年生が学生ポスター賞を受賞「高カリウム血症の心電図変化と急性期治療薬の作用メカニズム」

3月28日~30日に北九州で開催された日本生理学会の第101回全国大会において、大会1日目“病態生理”のセッションで研究発表を行った、看護学群の東沙耶さん(2024年3月卒業)が、学生ポスター賞(優秀賞)を受賞しましたのでお知らせいたします。

「高カリウム血症の心電図変化と急性期治療薬の作用メカニズム」をテーマとした本研究発表内容は, 風間教授による研究指導の下, 一貫して本学の看護学群内で行われた基礎研究成果です。

日常診療でよく遭遇する“高カリウム血症” とは

体の中に含まれるミネラル(電解質)の中でも、カリウムは、栄養素として欠かすことのできない「必須ミネラル」の一つです。しかし、慢性腎臓病により腎臓の働きが低下するなど、体の外にカリウムを十分に排泄できなくなると、カリウムが体内に蓄積し血液中のカリウム濃度が高くなります。これは “高カリウム血症”とよばれ、医療現場でよく遭遇する水・電解質異常のひとつです。高カリウム血症では、全身の筋力低下や脱力といった症状だけではなく、重篤になれば、心室頻拍や心室細動などの致死的な不整脈が誘発されるため、緊急の治療が必要になります。
<関連>風間教授編集「病態生理からひもとく水・電解質異常」(メヂカルフレンド社)
<関連>病態生理にもとづき、高カリウム血症に対する新規治療法について報告

ウシガエルによる擬似病態モデルで心電図異常を再現

高カリウム血症を早期に診断するためには心電図検査が有用であるとされています。本研究ではまず、ウシガエルを用いて高カリウム血症の擬似病態モデルを作り、その心電図異常を再現しました。その結果、高濃度の塩化カリウム投与により、心電図上のT波の増高だけでなく、持続的なQRS幅の開大も見られることを明らかにしました(図1)。さらにこのとき、個々の心筋細胞の興奮を表す“活動電位”の波形も同時に記録したところ、心電図波形の変化と連動したこれらの波形の変化も観察されました(図1)。このことから、心筋イオンチャネルの活性変化によってもたらされる活動電位波形の変化が、心電図波形の変化を引き起こすメカニズムが確認できました。

図1.ウシガエル心電図波形の記録と塩化カリウム投与後の心電図・活動電位様波形の変化(第101回日本生理学会大会ポスターより)

擬似病態モデルを活用し、さらに急性期における治療薬の効果まで明らかに

高カリウム血症に対しては、インスリン(+ブドウ糖)の点滴のほか、炭酸水素ナトリウムやβ2アドレナリン受容体作動薬(サルブタモール)による緊急治療も有効であるとされています。しかし、これらの薬の実際の効果については、これまで十分に検討されたことがありませんでした。そこで本研究では、これらの薬をウシガエルに前投与してから高カリウム血症を誘発し、心電図波形の変化を観察しました(図2)。その結果、心電図上ではQRS幅の開大が起きるものの、塩化カリウムを単独で投与した場合と比べると(図1)、その回復速度が有意に早まることが明らかになりました(図2)。

図2.炭酸水素ナトリウムやサルブタモールによる治療(予防)効果(第101回日本生理学会大会ポスターより)

以上の結果から、炭酸水素ナトリウムやサルブタモールの投与によって、肝臓や筋肉の細胞内にカリウムイオンを取り込む “ナトリウムカリウムポンプ(Na/K-ATPase)”が刺激され、高カリウム血症で生じる心電図変化(QRS幅の拡大)の回復過程が早められるメカニズムが考えられました(図3)。

図3.炭酸水素ナトリウムやサルブタモールによる治療効果のメカニズム(第101回日本生理学会大会ポスターより)

本研究成果は, 迅速な診断・緊急の治療を行わなければ命の危険にさらされてしまう“高カリウム血症”に対する、新たな診断や治療の糸口を世界で初めて明らかにしたといえます。風間教授は「一緒に研究をやってみたい人は是非ご一報ください。在学中だけでも“研究者”になってみたい!学会で発表してみたい!論文の著者になってみたい!という人はどうぞ、いつでもスタンバイしてお待ちしております。」とのメッセージを寄せています。

日本生理学会について

研究内容の詳細について

なお、本研究成果については、英文雑誌The Journal of Veterinary Medical Scienceの電子版に論文としても掲載されています(看護学群4年生の東沙耶さんが筆頭著者、風間教授は責任著者)。
<参考>卒業研究の4年生と風間教授ら「高カリウム血症の心電図変化と急性期治療薬の効果」を明らかに/看護学群

これまで風間教授が本学看護学群の学生を指導しながら発表してきた研究成果については、以下の和文・英文雑誌に掲載されています。

  • 若年者で新型コロナウイルス感染後に長引く症状の特徴(本学看護学群学生が筆頭著者)
  • Sodium bicarbonate and salbutamol facilitate recovery from hyperkalemia-induced electrocardiogram abnormalities in bullfrog hearts(本学看護学群学生が筆頭著者)
  • ウシガエル急性下壁心筋梗塞モデルにおける心電図変化のメカニズム(本学看護学群学生が筆頭著者)
  • Amitriptyline intoxication in bullfrogs causes widening of QRS complexes in electrocardiogram(本学看護学群学生が筆頭著者)
  • Cetirizine more potently exerts mast cell-stabilizing property than diphenhydramine(本学看護学群学生が筆頭著者)
  • 第6波と第7波で新型コロナウイルス陽性の若年者における症状の比較(本学職員・看護学群教員が共著者)
  • 若年者で新型コロナワクチン3回目接種後に起きる副反応の特徴―2回目接種後との比較―(本学看護学群学生・教員が筆頭著者)
  • Subepicardial burn injuries in bullfrog heart induce ECG changes mimicking inferior wall myocardial infarction(本学看護学群学生・教員が共著者)
  • Pyridoxine synergistically potentiates mast cell-stabilizing property of ascorbic acid(本学看護学群学生が共著者)
  • 気管支喘息患者に対する水泳の有用性―エビデンスに基づく看護での実践指導へ―(本学看護学群学生が筆頭著者)
  • Suppressing leukocyte Kv1.3-channels by commonly used drugs: A novel therapeutic target for schizophrenia?(本学看護学群教員が共著者)
  • 若年者で新型コロナワクチン接種後に起きる副反応の特徴と病態生理にもとづく対処法の検討(本学看護学群学生が筆頭著者)
  • Does immunosuppressive property of non-steroidal anti-inflammatory drugs (NSAIDs) reduce COVID-19 vaccine-induced systemic side effects? (本学看護学群学生が共著者)
  • 宮城県で発生した新型コロナウイルス感染症患者の特徴 ─第 1 波 88 名の集計から見えた問題点と今後の課題─(本学看護学群学生が筆頭著者)
  • Insulin accelerates recovery from QRS complex widening in a frog heart model of hyperkalemia(本学看護学群学生が筆頭著者)
  • 高カリウム血症に対し大腸のカリウムチャネルをターゲットとした看護的介入(本学看護学群教員が共著者)
  • デュシェンヌ型筋ジストロフィー女性保因者が発症するメカニズムと看護での実践(本学看護学群学生が筆頭著者)
  • Catechin synergistically potentiates mast cell-stabilizing property of caffeine(本学看護学群学生が筆頭著者)
  • 心電図検査における人為的ミスの発生と予防―ウシガエル心電図を用いた検討―(本学看護学群学生が筆頭著者)
  • 麻疹に対するビタミンA補充療法の意義と看護現場での実践(本学看護学群学生が共著者)
  • Reciprocal ST segment changes reproduced in burn-induced subepicardial injury model in bullfrog heart(本学看護学群学生が共著者)

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