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25.04.30
アナフィラキシー後に発症する急性心筋梗塞”コーニス症候群”に対する治療法の候補を報告/看護学群・風間教授
看護学群の風間逸郎教授は、病態生理学・内科学・一般生理学を専門分野としています。このたび、これまでの自身の研究成果をもとに、アナフィラキシー後に発症する急性心筋梗塞”コーニス症候群”に対する治療法の鍵となる重要な知見を、英文雑誌に報告しました。
本報告内容については、4月14日付けで、 英文雑誌(Clinical and Experimental Vaccine Research)の電子版に掲載されました。 |
食べ物や薬などが原因で起きる”アナフィラキシー”のメカニズム
アナフィラキシーとは、肥満細胞(=主に粘膜組織に存在する骨髄由来の細胞で、炎症や免疫反応などの生体防御機構に重要な役割を持つ)が過剰に活性化されて放出するヒスタミンによって、全身に強いアレルギー反応が起きる状態のことです(図1)。通常は、食べ物(甲殻類・そばなど)、薬(抗菌薬や痛み止めなど)、ハチ毒が原因になることが多いですが、新型コロナワクチンをはじめとするワクチン接種によっても、その中に含まれるポリエチレングリコール(PEG)という成分などが引き金となり、アナフィラキシーが起きることがあります。
アナフィラキシー後に発症し、迅速に治療を行わないと命にかかわるコーニス症候群
肥満細胞の活動性に注目し、コーニス症候群に対する有効な治療薬の候補を発見
急性心筋梗塞とは、心臓を養う血管(冠動脈)が閉塞して血液が十分に行き渡らなくなる結果、 心臓の筋肉が壊死してしまう病気のことです。重症のアナフィラキシーの後、この急性心筋梗塞を発症するケースがあり、 “コーニス症候群”とよばれます。
コーニス症候群は、肥満細胞から放出されたヒスタミンがアレルギー反応だけでなく、メカニズムのひとつとして冠動脈を攣縮させることによって起き(図2)、迅速に治療を行わないと命にかかわる大変危険な病態です。通常、アナフィラキシーに対する治療では、すぐにエピペン(アドレナリン)を筋肉注射することが大原則です。しかし、アドレナリンは血管を収縮させる働きもあるため、コーニス症候群の場合には、かえって心筋梗塞の病態を悪化させてしまう危険性があります。
アナフィラキシーを引き起こす主役の肥満細胞は、ヒトの血液中や、鼻などの粘膜に広く分布しています。そして、ひとたびハチ毒や食べ物、薬などの刺激が加わると、ヒスタミンを含んだ大量の分泌顆粒を細胞外に放出する状態に変容します(図3)。この現象は“脱顆粒現象(エキソサイトーシス)”とよばれます。
風間教授はこれまで、日常診療の中で多くの患者さんたちに使われている薬剤(降圧薬、ステロイド薬、一部の抗菌薬など)の中に、肥満細胞の活性化を強力に抑える薬があることを発見しました(図3)。さらに最近では、本学看護学群の学生たちと一緒に、薬剤だけでなく、ビタミン類やレモンに含まれる成分などの中にも、肥満細胞の活性化を抑えるものがあることを明らかにしました。
<参考>
加えて最近の研究で、これらの薬剤(降圧薬、ステロイド薬、一部の抗菌薬など)や食品成分の中には、血管の攣縮を抑制する作用をも併せ持つものがあることが明らかになってきました。これらの日常診療頻用薬や食品成分を服用することは、副作用の心配も少なく、アドレナリン単独による治療が難しいとされコてきたコーニス症候群に対する有効な治療法の選択肢になりうるかもしれません(図2)。
風間教授は今後も、臨床から発想した研究の成果を再び臨床に還元することを目標とし、日々研究に取り組んでまいります。風間教授と一緒に研究をやってみたい人(在学中だけでも“研究者”になってみたい人!)は、是非ご一報ください。(kazamai(a)myu.ac.jp メールの際は(a)を@に変えてご連絡願います)
研究報告の詳細について
なお、本研究報告は、4月14日付けで英文雑誌(Clinical and Experimental Vaccine Research)の電子版に掲載されています。なお、これまで本学看護学群で発表してきた、本執筆内容に関連する主な研究成果については、以下の英文雑誌に掲載されています。
- ACE2 Expression in the Kidneys of Pregnant and Postpartum Rats: Physiological and Pathological Significance During Pregnancy(本学看護学群学生が筆頭著者)
- 急性心筋梗塞で起きる鏡像変化についての実験的検討 - 医学と薬学オンライン2025年82巻1号p77-81(本学看護学群学生が筆頭著者)
- Potential prophylactic efficacy of mast cell stabilizers against COVID-19 vaccine-induced anaphylaxis - PubMed
- Lemon Juice and Peel Constituents Potently Stabilize Rat Peritoneal Mast Cells - PubMed (本学看護学群学生が筆頭著者)
- Pyridoxine Synergistically Potentiates Mast Cell-Stabilizing Property of Ascorbic Acid - PubMed (本学看護学群学生が共著者)
- Prazosin Potentiates Mast Cell-Stabilizing Property of Adrenaline - PubMed
指導教員プロフィール
・風間 逸郎(かざま いつろう):看護学群教授
病態生理学・内科学・一般生理学を専門分野としております。また、内科の医師として現在も患者さんの診療に携わる中での研究は、常に臨床からの発想に端を発しており、研究の成果を再び臨床に還元することを目標としてきました。そして、遺伝子レベルでの解析から、細胞、生体レベルでの解析まで行うことにより、ミクロの研究とマクロの研究とを結びつけることを常にこころがけています。
<参考>
- 看護学群4年生が日本生理学会の地方会賞を、風間教授と英語論文としても発表
- 新型コロナウイルス感染症が引き起こす臓器障害について執筆
- 急性心筋梗塞で起きる心電図の“鏡像変化”のメカニズムを報告
- 風間教授が英文書籍「Tea in Health and Disease Prevention(2nd edition)」で、カテキンやカフェインによる抗アレルギー効果について執筆
- 風間教授と4年生が「レモンやその成分による抗アレルギー作用」のメカニズムを解明
- 風間教授が高齢者でカリウム代謝異常症が起きやすいメカニズムのひとつを明らかに
- 第101回日本生理学会大会で看護学群4年生が学生ポスター賞を受賞「高カリウム血症の心電図変化と急性期治療薬の作用メカニズム」
- 若年者で新型コロナウイルス感染後に長引く症状の特徴を明らかに/看護学群・風間教授の指導の下、看護学群4年生と宮城大学事務局が共同で調査
- 高カリウム血症の心電図変化と急性期治療薬の効果を明らかに
- 急性下壁心筋梗塞で起きる心電図の“鏡像変化”のメカニズムを明らかに
- 新型コロナウイルス感染症の後遺症でおきる“ブレインフォグ”のメカニズムのひとつを報告
- 病態生理にもとづき、高カリウム血症に対する新規治療法について報告
- 三環系抗うつ薬(アミトリプチリン)中毒で起きる心電図変化とそのメカニズムを明らかに
- 新型コロナウイルス感染症の第6波と第7波における若年者の症状の特徴を明らかに
- 抗ヒスタミン薬による抗アレルギー作用の新たなメカニズムを明らかに
- 若年者における3回目の新型コロナワクチン接種後の副反応の特徴を明らかに
- 慢性腎臓病で新型コロナウイルス感染症が重症化するメカニズムのひとつを明らかに
- 風間研究室で「急性下壁心筋梗塞」で起きる心電図変化とそのメカニズムを証明
- 風間教授が卒業研究の学生と「ビタミン類が有する抗アレルギー作用」のメカニズムを解明
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- 新型コロナワクチン接種後の“アナフィラキシー”に対する予防法を発見
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- 風間教授・編集の『看護技術』10月増刊号「病態生理からひもとく水・電解質異常」発刊
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