新着情報
25.09.16
風間教授が新型コロナワクチン接種後に起きうる副反応について執筆/英文書籍「The Palgrave Encyclopedia of Disability」/看護学群
看護学群に所属する風間逸郎教授は、病態生理学・内科学・一般生理学を専門分野としています。これまで、看護学群の学生を研究指導しながら、新型コロナワクチン接種後に起きうる副反応やそのメカニズムについて英文・和文雑誌に報告してきました。英文書籍「The Palgrave Encyclopedia of Disability」(Springer Nature社)において、風間教授が8月28日に執筆したチャプター「Vaccine Injury」に、これらの研究成果がまとめられていますのでお知らせします。
The Palgrave Encyclopedia of Disability | SpringerLink
The Palgrave Encyclopedia of Disability provides the most comprehensive and contemporary research from leading international scholars about specific disabilities and how our understanding of these disabilities is shaped by historical, social, legal, religious, economic, geopolitical, and cultural factors. Offering multidisciplinary insights and analysis, this encyclopedia is an authoritative guide intended for scholars and students from different medical and allied health disciplines. It is also of benefit to those who develop health policies, medical doctors, psychologists, allied health professionals, legal experts etc.
- 発行元: Springer Nature社
- 発行年月:2025年1月
- 本チャプター公開:2025年8月
- 編集: Gabriel Bennett, Emma Goodall
- DOI:https://doi.org/10.1007/978-3-031-40858-8
- eBook ISBN:9780443141591 978-3-031-40858-8
人体で起きる“障害(disability)”について、メカニズムや予防・治療法のほか、最新の研究成果や社会・文化的背景まで学際的に幅広く紹介する英文書
本書は、広く人々の健康増進に関わる医療従事者や研究者、医療系の学生を対象として、疾病・感染・外傷・加齢・気候変動・環境変化などの様々な要因によって引き起きる心身の“障害(disability)”について、症状やメカニズム、予防・治療法といった医学的な側面だけでなく、最新の研究成果や、社会・文化的な背景に至るまで幅広く、学際的に紹介・解説した英文書籍です。例えば、近年、世界中で猛威を振るった新型コロナウイルス感染症や、罹患者数が増え続けている認知症や精神疾患についても、多角的な側面から解説されています。各研究分野や臨床現場の最前線で、まさに今活躍中の世界中の専門家たちが、各章の執筆を担当しています。
今回、風間教授が執筆したチャプターは、前回執筆したチャプター「Impact of COVID-19 on Individuals with Disabilities and Its Contribution to Causing Disabilities | SpringerLink(新型コロナウイルス感染症の合併症や後遺症)」に引き続き、“臓器の障害(disability)”という観点から、2021~2025年にかけて、看護学群の学生や事務局と協働しながら発表してきた新型コロナワクチン接種後の副反応についての研究内容をまとめ、新たにメカニズムや新規治療法に関する総説を加えたものです。
若年者で新型コロナワクチン接種後に起きる “全身性の副反応”の特徴を明らかに
新型コロナウイルス感染症の終息に向け、わが国でもワクチン接種が進められてきました。しかし、接種直後に様々な副反応が出ることが知られており、日常生活に大きな支障をきたしてしまうこともあります。調査の結果、若年者では、1回目よりも2回目接種後に発熱、頭痛、全身倦怠感などの全身症状が強く現われ、かつ長引くことが明らかになりました。さらに3回目接種後には、これらの症状に加えてリンパ節が腫脹する人の割合が増え、2回目に比べていずれの症状も出現時期が早く、程度も重くなる傾向がありました。
<参考>
“全身性の副反応” を緩和する薬の作用メカニズム:“リンパ球の活性化”に注目
ワクチン接種後、体の中では免疫細胞の一種であるリンパ球の活動性が高まるため、副反応が起きやすくなります。調査の結果、アセトアミノフェンよりも、非ステロイド性抗炎症薬(non-steroidal anti-inflammatory drugs: NSAIDs)とよばれるイブプロフェン、ロキソニン、アスピリンなどの解熱剤の方が、副反応の持続期間を短縮することが分かりました。NSAIDsは、「リンパ球カリウムチャネル」のはたらきを薬理的に抑えることによってリンパ球自体の活動性を弱め、副反応の症状を緩和する可能性を報告しました。
<参考>
新型コロナワクチン接種により起こりうる“アナフィラキシー”の実態と予防法
ワクチン接種後に起こりうる重篤な副反応のひとつとして“アナフィラキシー”が知られています。アナフィラキシーとは,肥満細胞が過剰に活性化することで放出するヒスタミンによって,全身に強いアレルギー反応が起き、全身性の蕁麻疹や呼吸困難,往々にしてショック状態に陥る非常に危険な病態です。一連の研究により、日常診療の中で多くの患者さんたちに使われている薬剤や食品成分の中には、肥満細胞の活性化を強力に抑えるものがあることを発見し、これらがアナフィラキシーに対する予防薬にもなりうる可能性を報告しました。
<参考>
“アナフィラキシーに合併する急性心筋梗塞”に対する治療法の候補を発見
アナフィラキシーの際、肥満細胞から放出されたヒスタミンはアレルギー反応だけでなく、心臓を養う血管(冠動脈)を攣縮させることによって急性心筋梗塞も引き起こすことがあり、迅速に治療を行わないと命にかかわる大変危険な病態です(“コーニス症候群”)。肥満細胞の活性化を抑える薬剤や食品成分の中に、血管の攣縮を抑制する作用を併せ持つものがあることを発見し、アドレナリン単独による治療が難しいとされてきたコーニス症候群に対する有効な治療法となる可能性を報告しました。
<参考>
研究報告の詳細について
「The Palgrave Encyclopedia of Disability」(Springer Nature社)は2025年1月に発刊されました。今回執筆したチャプター「Vaccine Injury」 は2025年8月に電子版で公開されています。なお、これまで本学看護学群で発表してきた、本執筆内容に関連する主な研究成果については、以下の英文・和文雑誌に掲載されています。
- 若年者で新型コロナワクチン接種後に起きる副反応の特徴と病態生理に基づく対処法の検討 | 文献情報 | J-GLOBAL 科学技術総合リンクセンター(本学看護学群学生が筆頭著者)
- 若年者で新型コロナワクチン3回目接種後に起きる副反応の特徴-2回目接種後との比較- | 文献情報 | J-GLOBAL 科学技術総合リンクセンター (本学看護学群学生が共著者)
- Does immunosuppressive property of non-steroidal anti-inflammatory drugs (NSAIDs) reduce COVID-19 vaccine-induced systemic side effects? (本学看護学群学生が共著者)
- Potential prophylactic efficacy of mast cell stabilizers against COVID-19 vaccine-induced anaphylaxis | Clinical and Molecular Allergy | Full Text
- Anti-vasospastic mast cell stabilizers: a novel therapeutic approach to anaphylaxis-induced acute coronary syndrome:: CEVR :: Clinical and Experimental Vaccine Research
研究者プロフィール
・風間 逸郎(かざま いつろう):看護学群教授
病態生理学・内科学・一般生理学を専門分野としております。また、内科の医師として現在も患者さんの診療に携わる中での研究は、常に臨床からの発想に端を発しており、研究の成果を再び臨床に還元することを目標としてきました。そして、遺伝子レベルでの解析から、細胞、生体レベルでの解析まで行うことにより、ミクロの研究とマクロの研究とを結びつけることを常にこころがけています。
<参考>
- 風間研究室で「マグネシウムの抗アレルギー効果とアナフィラキシー治療への有用性」を明らかに
- アナフィラキシー後に発症する急性心筋梗塞”コーニス症候群”に対する治療法の候補を報告
- 看護学群4年生が日本生理学会の地方会賞を、風間教授と英語論文としても発表
- 新型コロナウイルス感染症が引き起こす臓器障害について執筆
- 急性心筋梗塞で起きる心電図の“鏡像変化”のメカニズムを報告
- 風間教授が英文書籍「Tea in Health and Disease Prevention(2nd edition)」で、カテキンやカフェインによる抗アレルギー効果について執筆
- 風間教授と4年生が「レモンやその成分による抗アレルギー作用」のメカニズムを解明
- 風間教授が高齢者でカリウム代謝異常症が起きやすいメカニズムのひとつを明らかに
- 第101回日本生理学会大会で看護学群4年生が学生ポスター賞を受賞「高カリウム血症の心電図変化と急性期治療薬の作用メカニズム」
- 若年者で新型コロナウイルス感染後に長引く症状の特徴を明らかに/看護学群・風間教授の指導の下、看護学群4年生と宮城大学事務局が共同で調査
- 高カリウム血症の心電図変化と急性期治療薬の効果を明らかに
- 急性下壁心筋梗塞で起きる心電図の“鏡像変化”のメカニズムを明らかに
- 新型コロナウイルス感染症の後遺症でおきる“ブレインフォグ”のメカニズムのひとつを報告
- 病態生理にもとづき、高カリウム血症に対する新規治療法について報告
- 三環系抗うつ薬(アミトリプチリン)中毒で起きる心電図変化とそのメカニズムを明らかに
- 新型コロナウイルス感染症の第6波と第7波における若年者の症状の特徴を明らかに
- 抗ヒスタミン薬による抗アレルギー作用の新たなメカニズムを明らかに
- 若年者における3回目の新型コロナワクチン接種後の副反応の特徴を明らかに
- 慢性腎臓病で新型コロナウイルス感染症が重症化するメカニズムのひとつを明らかに
- 風間研究室で「急性下壁心筋梗塞」で起きる心電図変化とそのメカニズムを証明
- 風間教授が卒業研究の学生と「ビタミン類が有する抗アレルギー作用」のメカニズムを解明
- 気管支喘息に対する水泳の有用性を明らかに
- 風間逸郎教授と佐藤泰啓助教が、統合失調症に対する新規治療法の可能性を明らかに
- 「第99回日本生理学会大会」/看護学群学生3名と助手1名も筆頭演者として発表
- 若年者における新型コロナワクチン接種後の副反応の特徴を明らかに
- 新型コロナワクチン接種後の“アナフィラキシー”に対する予防法を発見
- 新型コロナワクチン副反応に対する非ステロイド性抗炎症薬の有用性を明らかに
- 看護学群・風間研究室の学生が「高カリウム血症の心電図変化とそのメカニズム」を証明
- 風間教授・編集の『看護技術』10月増刊号「病態生理からひもとく水・電解質異常」発刊
- 病態生理にもとづき、高カリウム血症に対する看護的介入方法を発見
- マグネシウム過剰投与が引き起こす「高マグネシウム血症」心電図変化とそのメカニズム
- 宮城県における新型コロナウイルス感染症患者の特徴を明らかに/風間逸郎教授が学生と報告
- 女性が筋ジストロフィー(デュシェンヌ型)を発症するメカニズムを発見
- 風間研究室の学生が「カフェインやカテキンによる抗アレルギー作用」のメカニズムを証明
- 心電図検査における人為的ミスの発生と予防/ 風間逸郎教授が学生と報告
- 麻疹(ましん)に対する新規治療法の可能性と臨床現場での有用性/風間逸郎教授が学生と報告
- 新型コロナウイルス感染症の“後遺症”に対する治療法を発見/風間逸郎教授
- 風間逸郎教授が新型コロナウイルス感染症に対する新規治療法の可能性を発見
- 風間逸郎教授がアナフィラキシーに対する新規治療法を発見
- 風間逸郎教授が研究指導する学生達が「心筋梗塞でおこる心電図異常のメカニズム」を証明
- 風間逸郎教授が腎臓の線維化における新規病態メカニズムを発見