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26.09.30

看護学群4年生が「非ST上昇型心筋梗塞」で起きる心電図変化とメカニズムを明らかに

看護学群に所属する風間逸郎教授は、病態生理学・内科学・一般生理学を専門分野としています。また、内科の専門医として臨床にも携わっており、主要な研究のひとつとして「心疾患の病態生理と心電図異常のメカニズム解析」をテーマとした研究も行っています。このたび、卒業研究指導をしている看護学群4年生たちが「非ST上昇型心筋梗塞で起きる心電図変化とそのメカニズム」を、ウシガエルの心臓を用いて証明しました。

本研究成果は,2026年9月付けで英文雑誌(Journal of Veterinary Medical Science)(オープンアクセス:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jvms/advpub/0/advpub_26-0327/_article)に掲載されました。今回の取組みは,看護学群4年生(瀬川奏太さん、川村きなりさん、本田ひかるさん、菅原胡桃さん)が主体となり,協働しながら、一貫して本学・看護学群内で行われた基礎研究成果です。英文雑誌に発表した論文では学生4名が共同筆頭著者となっています。

急性心筋梗塞の早期発見に欠かせない「心電図検査」

心臓を養う血管(冠動脈)が動脈硬化によって詰まると、心臓に十分な血液が届かなくなります。その結果、心臓の筋肉が傷ついてしまう病気が“急性心筋梗塞”です。急性心筋梗塞は突然起きることが多く、放置すると命にかかわるため、できるだけ早く発見し、速やかに治療を開始する必要があります。

急性心筋梗塞を早く見つけるために、最もよく行われる検査が心電図検査です。心電図検査は、体に電極を付けて心臓の動きを調べる検査で、痛みはなく短時間で行えます。心筋梗塞が起きると、心電図上で “ST部分が上昇する”という特徴的な変化が現れることがあります。この変化を確認することで心筋梗塞を疑い、すぐに治療を開始することができるので、心電図検査は患者さんの救命のために欠かせない検査です。

<参考>
風間教授と看護学群4年生が「急性側壁心筋梗塞」で起きる心電図変化とメカニズムを明らかに/看護学群(25.11.21記事)

症状が軽く、発見が遅れやすい「非ST上昇型心筋梗塞」とは

“非ST上昇型心筋梗塞”とは、心臓の血管が完全には詰まらずに起こる心筋梗塞のことをいいます。血流不足による虚血が、主に心臓の壁の内側(心内膜下)のみで生じるため、心電図では特徴的なST部分の上昇がみられません。また、胸痛が軽い、息切れやだるさだけであるなど、急性心筋梗塞に典型的な症状が現われず、発見が遅れるケースもあります。しかし、軽症に見えても心筋へのダメージは進行しているため、迅速に診断し、早期に治療を開始する必要があります。非ST上昇型心筋梗塞では心内膜下の虚血を反映し、心電図上で、逆にST部分の低下がみられることがあります(図1)。

図1:非ST上昇型心筋梗塞で起きる心内膜下虚血とST部分の低下(UWorld Medical: Acute Coronary Syndrome (ACS): ST-Elevation Myocardial Infarction (STEMI) And Non-STEMI (NSTEMI) - Cardiology | UWorld Medical Libraryより引用)

ウシガエルの心臓を用いて、非ST上昇型心筋梗塞の擬似病態モデルを作成

今回の研究では、ウシガエルの心臓を用いて、非ST上昇型心筋梗塞で見られるのと同様の心電図異常を再現し、メカニズムの解析まで行ったものです。実験の結果、心臓の表面を傷害することによって心電図でST部分が上昇したのに対し、心臓の壁の内側(心内膜側)を傷害することによって、逆にST部分が低下しました(図2)。

図2:ウシガエル心臓の表面または心内膜側を傷害前後の組織および心電図の変化(Segawa K, Kawamura K, Honda H, Sugawara K et al. J Vet Med Sci 2026より引用)

非ST上昇型心筋梗塞で起きる心電図変化のメカニズムについて

心筋梗塞では、傷害された心筋と正常の心筋との間で“傷害電流”とよばれる電流が発生します。これは、虚血におちいった心筋細胞では、細胞内にカリウムイオンを取り込む “ナトリウムカリウムポンプ(Na/K-ATPase)”の働きが障害され、正常の心筋細胞との間に膜電位差が生じるためです。非ST上昇型心筋梗塞モデルでは、心内膜側の傷害によって、主に拡張期に生じる傷害電流が、心臓の表面に置いた電極から見れば近づく方向へ向かうため、心電図の基線が上がり、相対的にST部分が低下したと考えられました(図3)。

図3:非ST上昇型心筋梗塞でST部分が低下するメカニズム(Segawa K, Kawamura K, Honda H, Sugawara K et al. J Vet Med Sci 2026より引用)

医療や看護の現場における本研究成果の意義

看護師をはじめとする医療従事者にとって、心電図で起きる変化のメカニズムを理解することは、目の前の患者さんの中で起きていること(病態生理)を理解し、病気を診断するための強力な武器になりえます。本研究成果は, 急性期の医療・看護の現場で、致死的な心筋梗塞に至る前段階の“非ST上昇型心筋梗塞”をより迅速に診断し、的確な治療につなげられるようにするための糸口を明らかにしたといえます。

看護学群4年生たちのコメント

川村 きなり さん
研究に参加させていただく中で、試行錯誤をしながら自分の手で疑問を解決していくことや、先生方や研究室の仲間と考えを共有しながら研究を進めることに面白さを感じました。今回の経験を通して得た知識や考え方を、今後の卒業研究にも生かしていきたいです。

本田 ひかる さん
臨床で当たり前のように使われている薬であっても、その効果や作用に改めて疑問を持ち、研究として掘り下げることで新しい可能性を見つけることができました。今後は卒業研究発表会や学会発表に向けて看護の視点を踏まえながら分かりやすく伝えられるように準備を進めていきたいと思います。

菅原 胡桃 さん
今回初めて実験研究に取り組みましたが、研究を通して、まだ解明されていないことを少しずつ明らかにしていく面白さを実感しました。今後も探究心を持って研究に取り組んでいきたいです。

瀬川 奏太 さん
今回、ウシガエルの心臓を用いて心疾患のモデルを作製する研究を通して、実験結果を一つひとつ検討し、形にしていくことの難しさと興味深さを学びました。また、実験を通して具体的な病態の特徴や過程についても理解を深めることができました。今回の経験を今後の看護や学習にも生かし、探求心をもって学び続ける姿勢を大切にしていきたいです。

研究報告の詳細について

本研究成果は,2026年9月付けで英文雑誌(Journal of Veterinary Medical Science)の電子版に論文として掲載されています。本論文は、看護学群4年生(瀬川奏太さん、川村きなりさん、本田ひかるさん、菅原胡桃さん)が共同筆頭著者となっています。なお、これまで本学看護学群の学生(または教員)を指導しながら発表してきた研究成果については,以下の和文・英文雑誌に掲載されています(いずれも風間教授が責任著者)。

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